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2022-03-25 00:00
(連載2)ゼレンスキー国会演説が示したもの
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
ゼレンスキー大統領とウクライナ側からのリップサービスは「国際機関が機能してくれませんでした。国連の安保理も機能しませんでした。改革が必要です」「予防的に全世界が安全を保障するために動けるためのツールが必要です。既存の国際機関がそのために機能できないので、新しい予防的なツールをつくらなければならないです。本当に侵略を止められるようなツールです。日本のリーダーシップがそういったツールの開発のために大きな役割を果たせると思います」というところだと思う。
日本は長年、国連安全保障理事会の常任理事国(アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシア)入りを目指してきた。しかし、常任理事国の顔ぶれを見ても分かる通り、第二次世界大戦で連合国だった国々しか常任理事国になっていない。国連の実態は連合国であり、それが大きくなって国連となった。長らく敵国条項というものも存在したということもある。ウクライナは日本が常任理事国入りということになれば支持するということを述べている。しかし、国連改革は無理だ。
そうなれば新しい国際機関や枠組みを作るということになるが、国連安保理常任理事国の特権が剥奪されるようなものになるとは考えられない。こうした議論の大本は簡単に言えば、中国とロシアを特権的な地位から追い出したいということだ。新しい国際機関や枠組みが出来たとしても、大本に中国とロシアの排除があるならば、少なくとも中国やロシアは入らない。また、アメリカと中露の間でバランスを取りたい国々も厳しい立場に追い込まれる。世界は再び2つに分かれての新たな冷戦状態になる可能性もある。冷戦とは「長い平和」だったという主張もあるが、世界各地で悲惨な戦争、内戦が続いたこともまた事実だ。世界は混沌を深めていく。
日本がウクライナに対して軍事支援をすることはできないし、そうなれば経済制裁を続けて下さい、民生用の支援をお願いしますということくらいしかできない。だからどうしても総花的になってしまう。日本という国がやるべきことはそれくらいで良いし、それくらいしかできない。国民はウクライナ戦争以来、続く円安や資源や資材不足による、物価高騰を甘受しなければならない。そのために支払う代金であっても言ってみれば、ウクライナ支援の一環だと牽強付会で言えば言える。今は戦争がエスカレーションしないことを望む。そのためにアメリカが参戦して直接ロシア軍と矛を交えるような事態に陥らないことを望む。ルシタニア号事件や真珠湾攻撃のようなことが起きないように祈るばかりだが、私は悲観的になっている。(おわり)
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