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2022-04-08 00:00
(連載1)国防の基本は、国民の強い意志
赤峰 和彦
自営業
プーチン氏は、高額兵器の消耗に加え、ウクライナの思いもよらぬ強い抵抗、西側諸国による最大級の金融制裁など、予測以上の深刻な事態に直面していて毎日を激怒しながら過ごしているようです。もともとウクライナ侵略作戦はずさんな作戦立案だったことが明らかになっています。世界最強と言われるアメリカ海兵隊でさえ、キエフの10分の1のイラクの都市ファルージャを制圧するのに2カ月近くかかっています。キエフどころか「ウクライナ全土を数日で落とせる」とプーチン氏が聞きたい情報ばかりをあげていた連邦保安局(FSB)の対外諜報部門は、軍事作戦よりもプーチン氏のご機嫌取りに忙しかったのでしょう。しかも、現状のロシア軍の兵力ではNATOに遠く及ばず、「ロシアは核兵器による威嚇でしかNATOに対抗できない」とまで指摘されるほど、ロシア軍の弱体化が指摘されています。さらに、強力な金融制裁のおかげで戦闘機の補修やミサイルなど兵器の補給にも支障が生じて、作戦変更を余儀なくされるまでに追い込まれているようです。
これらは、ウクライナの人びとの祖国防衛の熱烈な思いがロシア軍への必死な抵抗を生み、その思いと行動が国際社会の共感を生み出してロシア制裁の機運を醸成した結果です。同時に、ロシアの一方的な停戦案を押し戻す原動力となっています。国民一人一人の覚悟が国防には何よりも大切であることを教えてくれました。
さて、ここでプーチン氏をそこまで追い詰めたウクライナを見るたびに、国民の国防意識がいかに重要かということが、よくわかると思います。現代の国防とは、平時の国家体制の中に、恒久的な戦時社会と戦時経済を構築することを意味します。それだけに、兵器も兵士も戦闘行為の始まる前に大量に用意しなければなりませんし、兵器も兵士も準備や訓練に長い時間を要します。
先日のニュースでウクライナのビール工場が急遽、火炎瓶製造ができるよう切り替えられたと報じられましたが、だからといってウクライナは今回の事態を受けてにわかに戦争の準備を始めたわけではありません。実際には、ロシアによるクリミア併合のあと大きく国防政策を転換しロシアの武力行使に備えてきました。戦争の歴史を紐解くと、第一次世界大戦前までの戦争では、平時の生産施設を可能な限り早く転用して生産された兵器をもって戦うということが普通でした。1861年からのアメリカ南北戦争では、大砲なども、大急ぎで転用された平時の工場で、しかも戦闘が始まってから生産されています。また1870年からの普仏戦争は、戦闘に駆り出されるわずか数週間前に初めて軍服を着せられた民間人によって戦われました。しかし、1890年代に入ると戦時経済と平時経済は別物となり、第一次世界大戦以降、この考えが今日まで定着しています。とはいえ、第二次世界大戦後も米ソを中心に軍拡は続き、冷戦終結後も中国やインドなどの新興国は新しい軍事政策をとり、有事に備えて最新兵器の調達に走っています。このように、軍拡競争が起きているにも関わらず、近代史において最も長く大国間の戦争のない期間が70年続いた結果、同じ平時経済でも戦時を見越してきた国としてこなかった国で戦時における防衛力には大きな差がついたといえるでしょう。(つづく)
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