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2022-04-16 00:00
世界規模の戦時体制が敷かれていく可能性
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
ロシアによるウクライナ侵攻によって世界は戦時管理体制に入っていく。戦時管理体制とは物資の配給も含めた統制経済ということだ。これは先進諸国では起きないだろうが、アフリカ諸国や中東諸国では食料を国民に行きわたらせるために、配給ということにもなりかねない。戦時中の日本やイギリスなどと同じような状況になっていく。戦争当事国であるロシアやウクライナでもそのようになっていくだろう。このような状況では食料を含む実物資産を生産している国々が相対的に強くなるが、そうした国々の多くは対ロシア制裁に慎重であり、この点で非常に懸命な動きをしていると考える。先進諸国は対ロシア制裁を主導しているが、そのためにそれぞれの国内に住む人々に物価高らスタグフレーションへというリスクを負わせることになっている。
ロシアはカナダと並んで安価な肥料の輸出大国であり、ロシアに対する制裁は世界規模での農業生産にも影響を与える。そもそも食料不足が予想されるからと言って、食料生産を急に倍増させるということはできない。耕作地には限界があるし、肥料が足りないとなれば収穫予想はそこまで増えない。そうなれば食料不足は世界規模で申告は問題になる。日本では食料品の価格が上昇していくことは確実で、これに石油の価格上昇も加われば、その上昇幅はより大きくなる。生活に困窮する人の割合が更に大きくなっていくだろう。
対ロシア制裁に慎重な国々が多く存在するのは当然のことだ。今はウクライナ国民支援で寄付金や義捐金が日本国内でもどんどん集まっているが、日本国民でそのような義捐金を上げたくても上げられないそんな人の数がこれからどんどん増えていく。そして自分たちが寄付金や義捐金を貰わねばならないという人たちも多くなっていく。更に言えば、石油価格の高騰によって全ての財の価格が上がっていく。全ての財には物流コストが含まれる。それを抑えようとすれば結局人件費を抑制するしかなくなる。そうなれば物価は上がっていくが賃金は上昇しないというスタグフレーションということになる。これまでは、賃金は上がらないが物価も上がらないというデフレーションの状況が平成時代から30年近く続いた。しかし、これからはコストプッシュ型インフレーションによるスタグフレーションの懸念が高まる。
私たちはウクライナ戦争から遠く数千キロ離れた日本に暮らしている。しかし、既に戦争に巻き込まれている。戦時体制に組み込まれている。寄付や義捐金を直接払わなくても戦争によるコストを負担している状況だ。私たちはいつまでこの状況に耐えられるかだが、スタグフレーションに陥ってしまえば耐乏生活も長くは続けられない。
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