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2022-04-25 00:00
北朝鮮、「ウクライナ」便乗の危うさ
鍋嶋 敬三
評論家
ロシアによるウクライナ侵略に世界の耳目が集中している間にも北朝鮮は核兵器・弾道ミサイル開発を急ピッチで進めている。日本、米国、東アジア地域にとっての軍事的脅威は見過ごせないほど高まった。朝鮮労働党の金正恩総書記は「体制維持の上で不可欠な抑止力として核開発を推進している」(令和3年版防衛白書)ことからも、「核兵器さえあればウクライナのように簡単に攻め込まれない」との確信を一層強めたに違いない。皮肉にもそれは親善関係にあるロシアのプーチン大統領がソ連崩壊に伴うウクライナの核放棄の代わりに領土主権を保証した米露英によるブダペスト覚書(1994年)をいとも簡単に無視したからである。北朝鮮は既に2017年には6回目の核実験と大陸間弾道弾(ICBM)を発射し「国家核戦力の完成」を宣言。2021年1月の新兵器開発5カ年計画で「核戦争抑止力」を強化、「最強の軍事力」を育てるとして核・ミサイル開発を一層促進する方針を掲げた。
ウクライナ情勢が急を告げた2022年に入って以降、各種ミサイル発射実験を立て続けに実施、9回目になる3月6日の弾道ミサイルは高高度で打ち上げ飛行距離を抑えるロフテッド軌道、半年前の巡航ミサイルは極超音速型の実験など速度、高度、滑空飛行など変化に富んだ新種の実験を重ねてきた。3月24日の10回目の発射実験は新型ICBM「火星17」とされ、飛距離1万5000㎞と米本土が射程に入る。北朝鮮はこれについて「核攻撃手段の核心」を完成させたと誇示、金総書記が「米帝国主義との長期的対決の徹底準備」を宣言した。岸信夫防衛相も記者会見で「これまでとは次元が異なる深刻な脅威」と述べて、日米同盟にとっても重大な脅威との認識を示した。
ミサイルに装着する核弾頭の開発も急速な進展が予想される。北朝鮮は核実験を2006年以来6回実施した。2017年9月3日の6回目実験について北朝鮮は「ICBM 装着用の水爆実験を成功裏に断行した」と発表。韓国の2020年国防白書は「水素爆弾試験を実行した」と評価した。防衛省は「核兵器の小型化・弾頭化を実現し、これを弾道ミサイルに搭載してわが国を攻撃する能力を既に保有している」(防衛白書)と核・ミサイルの脅威が現実のものとなっていることを認めた。さらに多弾頭化の開発が進むだろう。日本国民の間に対中露も含めた脅威認識が浸透しているかどうか甚だ疑問だ。「敵基地攻撃能力」をめぐる混迷ぶりをみても、特に政府与党の政治家の責任は大きい。北朝鮮は4月16日には短距離ミサイル2発を発射したが、公式発表によれば「戦術核運用の効果と多角的な火力任務を強化する大きな意義」を強調し、実験に立ち会った金総書記が「核戦闘武力の一層の強化」を指示した。
米国の衛星写真によれば、核実験場のある豊渓里(プンゲリ)では爆破した地下核実験施設への坑道の修復作業の動きが見られ、核開発施設の動きも活発化しているとされる。4月25日に朝鮮人民革命軍創建90周年の記念日を迎え大々的な軍事パレードが想定される。韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)新政権が5月10日に発足するのを前に米韓合同軍事図上演習に北朝鮮が強く反発した。金与正党副部長は4月4日付談話で韓国が「軍事対決を強行するなら我々の核戦力が任務を遂行する」と新政権を核威嚇した。北朝鮮の新たな核実験は半島の緊張を一気に高める。北朝鮮の強気の背景には中国、ロシアの援護政策がある。中露は国連安全保障理事会の常任理事国でありながら、その制裁決議に反する相次ぐミサイル実験を黙認し続け、禁輸対象の石油、ミサイル関連品の調達に裏で手を貸している。ウクライナ侵略をめぐる中露の連携は北朝鮮をその輪に組み込みアジアの安全保障の脅威を一層強めている。日・米・韓を中心とする同盟の協調体制で中・露・北朝鮮に強い立場で臨まなければ、アジア太平洋の安全保障はますます危うくなるだろう。そのためには韓国の尹新政権が史上最悪の日韓関係を正常に戻すことが先決である。
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