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2022-04-26 00:00
どうしたらロシアとウクライナの戦争を止められるのか
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始してから2ヶ月経つが、いまだにプーチン大統領はウクライナ東南部を中心に残酷な戦闘を続けている。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領も、停戦案が受け入れられまで戦い抜く決意を示している。この戦争を終結させるためには、まずプーチン大統領の性格と思惑を突き止めなければならない。そこで、ロシアの専門家である東郷和彦・元外務省欧亜局長と亀山郁夫・前東京外国語大学学長の発言から検討してみたい。
2人の発言は、いづれも最近の毎日新聞夕刊に掲載されているので、それを読みながら考えてみた(4・15、4・22の夕刊を参照)。東郷さんは外交官としてソ連課長、欧亜局長、オランダ大使などを歴任したロシア外交の専門家である。その結論は「ロシアは強いリーダーによる統治」であり、ロシア国民もそれを求めて来たので「アングロサクソンの作り上げた民主主義の制度とは相入れない」と断言する。プーチン大統領は2000年の就任直前に発表した論文で、自らの使命を次のように定めている。「ソ連崩壊後の10年間でロシアは三等国になってしまった。だが、ロシア国民は三等国に甘んじる国民ではない。ロシアは強くて豊かで多様な価値を持つ国だから、そういう国に変えていく」と主張する。さらに、ソ連崩壊後、ワルシャワ条約機構が解体されたので、それに対抗するNATO(北大西洋条約機構)も解体されるべきなのに、逆にウクライナとジョージアの加盟を原則OKとした。このため、プーチン氏は我慢のレッドラインを超えてしまったというのだ。
一方、亀山さんはロシア文学が専門で、文豪ドストエフスキーの研究で知られている。亀山さんは「今回の戦争から受けている衝撃は『カラマーゾフの兄弟』に出てくる「神がなければ、すべては許される」という言葉でしょうか。この言葉はウクライナのキーウ(キエフ)郊外ブチャで起こった虐殺の事実にも深く通じている」と断じる。その上で、亀山さんは「私が恐れているのは、西側による経済制裁が逆効果を生むことです。制裁すれば市民の不満が高じ、プーチン政権は自壊するというのが西側のシナリオですが、「反戦」から「愛国心」に変転する可能性も決して少なくない」と言い切る。さらに、東郷さんはプーチン氏が首相だった頃、小渕恵三首相(当時)との会談に同席した時のことを思い起こした。プーチン氏はその時、テロリストへの断固たる決意を述べていて「彼は必要とあらば武力を使う。これは絶対に忘れてはならない。もっと怖いのはその時にプーチン氏がどう出るか、誰にも分からないことです」と指摘した。そのため東郷さんは「一刻も早く停戦すべきだ」と力説し、プーチン氏もウクライナも負けにならない連結点を探すよう提案した。
東郷さんは日本外交にも言及し、「和平について日本は独自に動けるはずです。ゼレンスキー氏と米国に対して意見すべきだ。プーチン氏を第三次世界大戦の瀬戸際にまで追い詰めていいのかと」。今回の軍事侵攻で日本政府は、米国の後を追っているだけというのが大方の見方だろう。外相経験者の岸田首相はもっとリーダーシップを示すべきだ。今こそ、日本外交の存在感を世界に示す絶好のチャンスではないか。
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