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2022-05-09 00:00
ロシア対独戦勝は米英の兵器・武器援助で成し遂げられた
山田 禎介
国際問題ジャーナリスト
英国のジョンソン首相は5月3日、ウクライナ最高会議に向けてオンライン・ビデオで演説し、ロシアの脅威に対する西側の対応が遅すぎたと認めた。ロシアの軍事侵攻開始以来、外国首脳がウクライナ議会へ向けて演説するのは初めてだが、はるかトルコのオスマン帝国大宰相を先祖に持つジョンソン首相の動きは、それ以上に第二次大戦での英チャーチルの米国の対欧援助を求める演説に酷似する。
5月9日は旧ソ連時代からロシアの対独戦勝記念日。今年はとりわけウクライナ侵攻とのかねあいで、ロシア・プーチン大統領の言動が注目されている。だが、忘れてならないのはこの対独戦勝は、旧ソ連単独の力でナチスドイツを消滅させたことではない。そこには米英からの膨大な兵器・武器援助があって成し遂げられたものだ。しかし、天文学的とも言える旧ソ連の犠牲者の数の前には、「ソ連邦はかくも勇敢に闘った」とする民族的独り歩きが先行し、当時は同じ連合国側米英による大量軍事援助の事実は、歴史観でも忘れられそうな気配だ。
その膨大な兵器・武器援助は、具体的には主として米国だが、アラスカ経由シベリアルートによるものと、もう一つ、こちらの補給ルートがナチスドイツに決定的な敗北をもたらしたノルウェー、フィンランドとの国境に近い不凍港ムルマンスクへの、英国経由大輸送船団での兵器・武器援助だった。ムルマンスクは現代ロシアでも、北極圏最大の都市として重要港である。
もちろんナチスドイツ海軍もUボートが大西洋、北海でオオカミのように集団となってこのムルマンスク向け大船団を襲ったので、被害も甚大であった。また旧ソ連の対独戦でナチスを破り、さらに戦後のソ連衛星国の反ソ暴動では、力で鎮圧するソ連軍の象徴的な役割を果たしたのがソ連「T型戦車」だったが、このキャタピラーに大型導輪を履くT型戦車の原型は、ソ連にもたらされた米国の「クリスティー快速戦車」だった。さらに皮肉なケースだが、世界の民族解放闘争の武器シンボルとして第二次大戦後の現代神話となった「カラシニコフAK47自動小銃」にしても、ナチスドイツの自動小銃の改良型だ。
現代ロシアの対独戦勝記念日の背景たるものは、当時のソ連が単独でナチスドイツに勝ったものではない。まさしく現代ウクライナが、米欧からの表面・水面下両面での兵器・武器援助を得てロシアの侵攻を食い止めようとしている姿と、皮肉な形でオーバーラップしているようにも見えるのだ。
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