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2022-05-11 00:00
ロシアを追い詰める米欧の対応は本当に正しいのか
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシアがウクライナへ軍事侵攻してから2カ月以上経過しているが、ロシア側の作戦は思うように進んでいない。それどころか、ロシア軍の非人道的対応に対し、プーチン大統領への批判が強まっている。その一方、米国や欧州諸国の対応にも疑問の声が上がっていて「ロシアは悪、米欧は善」との見方に懐疑的な論調も出てきている。最近の報道を参考にしながら、双方の主張を検討してみた。
第一に、欧州の安全保障の枠組みであるNATO(北大西洋条約機構)への加盟問題である。ソ連時代は旧ソ連と東欧諸国による「ワルシャワ条約機構」があったが、1991年のソ連崩壊で後者の枠組みがなくなり、ソ連を継承したロシアはNATOも解体されるものと期待していた。ところが、旧東欧諸国などが「ロシアは信用ならないから、我々もNATOに入れてくれ」と言い出し、NATOは解体されるどころか、ウクライナとジョージアの加盟を原則OKとするなど、拡大に向かって動き出した。これにロシアが強く反発、ウクライナを緩衝地帯として中立化するよう要求している。第二に、ウクライナの保養地、クリミア半島の帰属問題である。ウクライナで2014年、親露派のヤヌコビッチ大統領が欧州連合(EU)への加盟にマッタをかけたことに市民が反発、大統領を追放する挙にでた。これが「マイダン革命」と呼ばれる親露派政権打倒である。これに対し、プーチン大統領はウクライナの反対を押し切ってクリミア半島をロシアに編入した。この時、マイダン革命を裏でサポートしたのが当時、米国副大統領だったバイデン氏である。
バイデン氏とウクライナとの関係はその後も続いた。ゼレンスキー大統領が昨年、「クリミア奪還」を公言したのを受け、積極的に協力したのも米大統領に就任したバイデン氏だった。バイデン氏は自伝の中で、もっとも心血を注いだ仕事はウクライナ問題だとし、「プーチンは悪、親欧州のウクライナが正義」という自らの立場を明らかにしている。ロシア外交が専門の東郷和彦氏は毎日新聞のインタビューで「クリミア奪還をバイデン氏の後ろ盾なしにゼレンスキー氏が発言するとは考えにくい。プーチン氏とすれば、2人が1年かけて挑発し、あらゆるオプションをロシアから奪い去ったと見えたはずです」と指摘している。
今回の軍事侵攻では、プーチン大統領の対応への批判が高まっているが、米国や欧州諸国がそこまでロシアを追い込んだとの見方もできる。その結果、プーチン大統領は核兵器の使用をも辞さない強硬な姿勢を示している。東郷和彦氏はこうした経緯を説明し、「日本はまず米国と話し合い、頭を冷やせというべきです」と指摘している。岸田文雄首相は、米国との関係を緊密にするためにもバイデン大統領に対し、こうした考えをきちんと伝えるべきではないだろうか。
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