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2007-10-15 00:00
小沢理論に異議あり――ISAF参加をめぐって
角田勝彦
団体役員・元大使
野党、とくに民主党の、とにかく政府をゆさぶって早期解散、総選挙による政権奪取を実現しようとの方針は変わらないようで、テロ特措法問題についても、政府・与党による給油新法案の国会提出は遅れており、給油中断の可能性が高くなった。先行きが心配される。
「アフガニスタン戦争は直接の国連決議なしに米国が始めた戦争で、インド洋での給油活動は憲法違反である」との民主党の主張は、今年9月19日に安保理感謝決議1776が採択されたあとも変わらないが、2001年9月12日付安保理決議1368を含め給油の意義などを説く政府説明の方が、次第に国民の支持を集め、給油活動継続賛成の方が多数派になってきている(10月10日付『読売新聞』掲載の世論調査では賛成49.1%、反対37.2%)。分が悪いと見てか民主党は、給油された油が米軍のイラク作戦に使用されたのではないか、など別の論点に重点を置き出している。
しかし、ここで私が問題にしたいのは、この関連で民主党の小沢一郎党首が最近の月刊誌『世界』などで発表している「国連決議があれば、憲法9条に縛られなくなる」との持論である。「国連安保理の集団安全保障(国連憲章第7章)決議に基づく行動なら、武力行使を伴う、たとえばアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)にも参加できる」との議論である。他方、政府は「国連決議の有無にかかわらず、憲法9条は自衛隊による海外での武力行使を認めていない」と主張している。
「政権をとれば、ISAFにも、紛争が続くスーダンでの国連平和維持活動(PKO)にも、自衛隊を派遣したい」との小沢党首の意向には、民主党内部にも異論がある。小沢党首は10月10日の記者会見で「(ISAFが)どうしてもいやなら離党するほかない」と強権的姿勢を示したが、10月14日のNHK「日曜討論」で、民主党出席者は、小沢理論、とくに憲法第9条との関係を厳しく糺す自民党出席者に対し、参加するかしないかはその時の個別判断であり、またISAFへの参加にも民生支援的なものがあると答弁していた。野党内でも共産・社民両党は派遣反対である。
法律論としては、憲法98条の「条約及び国際法規の遵守」規定から、憲法に対する条約及び国際法規の優先を唱える学説がある。また国連憲章第25条は「国連加盟国は、安保理の決定を憲章に従って受諾し、且つ履行することに同意する」と規定している。そして安保理は軍事的措置を決定することが出来るのである。もっとも加盟国に行動を義務づける「決定」は稀で、ISAFに関する2001年12月20日付安保理決議1386も、ISAFの編成を承認し、参加する加盟国に任務遂行のためすべての必要な措置をとることを承認しているに過ぎない。なお条約・国際法規優先説をとると、日米安保条約も憲法に優先することになる。集団的自衛権の解釈変更どころの話ではない。
10月10日付『読売新聞』掲載の世論調査で「民主党には政権を担当する能力があるか」との質問に対し、「ある」35.0%、「ない」50.3%の結果が出たのは、小沢党首の従来からのこの主張も影響しているのではないだろうか。
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