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2022-05-19 00:00
(連載2)ウクライナ危機における複眼的外交の必要性
船田 元
衆議院議員
ウクライナの歴史は外部勢力からの侵略に終始したため、領土や独自文化に対する愛着はとても強い。だから兵力で優るロシアにこれだけ対抗できるとも言える。それを欧米諸国が軍事物資の提供や制裁強化で助けるのは当然なのだが、一方でこれを続けると戦況は長引き、激しい戦闘による犠牲者は膨大な数に登ることが懸念される。よって、「撃ち方止め」、すなわち落とし所を見つける努力が当事国のみならず、多国間において必要になる。EUやNATOとロシアの間に何らかの緩衝地帯を設置することや、国連安保理がロシアの拒否権により機能不全に陥っている以上、新たな安全保障の枠組みを作り、ウクライナとロシアの軍事行動を抑える役割を担わせなければならない。
もう一つはロシアに対する経済制裁における課題である。EUはロシア産原油の輸入停止や、ロシア最大の金融機関・ズベルバンクのSWIFTからの遮断など、さらに強固な制裁を発表した。既に天然ガスや石炭はほとんど止まっており、EUでは今後エネルギー供給不足が深刻になる。一方、中国をはじめアジアの幾つかの国が、ロシアとの外交やエネルギー依存関係を崩したくないとして、この制裁に同調していない。欧米諸国がどんなに強硬に制裁したとしても、このような抜け穴が生じており、その効果には限界がある。最近岸田総理がインドネシアやベトナム、タイを訪問して同調を呼びかけたが、それに応じる気配は残念ながら感じられない。
特にインドは以前よりロシアとの関係が深い。人道支援物資を輸送するために立ち寄ろうとした自衛隊機を認めなかったことは、大変ショッキングであり、自由で開かれたアジア太平洋を目指す、「クワッド」の一員として認めて良いのか疑問が生じる。ロシアへの経済制裁に対しては日本も欧米に同調せざるを得ないのだが、同調しない、あるいは同調しにくいアジア諸国のスタンスも、我々は理解する必要がある。またエネルギーをはじめとする物資不足や価格上昇が、各国の貧困層や途上国の経済をより困難にしていることにも注意しておかなければならない。
具体的に何をすべきかを提言する力は私にはないが、日本はG7の中で唯一のアジアの国であるのだから、欧米に追随するだけではなく、この事態をまさに複眼的に考察して、アジア諸国も納得できる幅広く柔軟な対応をすることも必要ではないだろうか。例えば今後のエネルギー不足や価格高騰に耐えられるよう、アジア地域への備蓄の放出、購入代の肩代わりや基金を構築するなどである。(おわり)
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