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2022-05-22 00:00
(連載2)ロシア情勢にみる報道のあり方
赤峰 和彦
自営業
3月2日の日経新聞には、「トヨタ自動車は、ロシアでの自動車生産を4日から一時的に止めると発表した。欧米日の対ロシア経済制裁を受け、同国外からの部品供給に問題が生じているためで、再開は未定。ホンダは自動車や二輪車などのロシアへの輸出をとりやめる」という記事がでました。ただし、経済制裁の影響が日本企業にも及ぶと読む人もいたのは事実です。また、前述の石油資本がロシアから撤退して巨額の赤字を負ったという記事も、ロシアが設備を横取りしてロシアが儲かったという話ではなく、石油資本の撤退で石油掘削機などのメンテナンスができなくなり、ロシア側が大事な資金源の一つである石油を採掘できなくなると理解すべき記事なのです。その道に詳しくない記者が記事を書くとまるで世の中が逆に見えるのです。
精密機器分野でも同じことが起きています。ロシアが半導体の調達に苦労しているのです。しかも、半導体が多く含まれるスマートフォン、サーバー、通信基地局、ネットワーク機器などの完成品も輸入できなくっています。これで、ロシアの得意分野の“サイバー攻撃”も継続性に黄色信号が灯ることになりますし、IT技術の塊である最先端兵器や戦車も部品不足に泣くことになります。すでに戦車製造工場の操業停止情報もでています。しかも、ロシアが頼りにする中国も、米国の目を気にしています。ファーウエイが受けたような制裁を新たに受けることを恐れているだけでなく、中国自身も米中経済摩擦で最先端のIT関連用品を手に入れられなくなっているため、部品不足に陥っている現実があります。
一方、ロシアでは食料品にも影響がでているようです。4月の消費者物価が17.83%上昇したと報じられていますが、そのうち食品は20%上昇したとのこと。すでに3月初めには、小麦粉、砂糖、油などの基本物資に関して、客の購入量を制限しているという話もあります。なお、このうち、砂糖は原材料のビートの種子が海外からの輸入に依存しているため、種子の取引まで禁止されたら砂糖を生産できなくなります。生活必需品の価格高騰はロシア人には大打撃になります。
以上の検証だけでも、ワイドショーなどの報道が映し出すロシアと異なる視点から見たロシアには相当の乖離があります。原因は報道姿勢だけでなくメディアの勉強不足の部分も大いにあるでしょう。勉強不足のメディアの解説ばかり見ていては、いま何が起きているのか、そして、それがどうなろうとするのかはわかりません。私たちは、特定のメディアに依存せず、様々な角度から情報を集めていくしか方法はないようです。(おわり)
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