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2022-05-27 00:00
安倍「日銀は日本政府の子会社」発言の問題点
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「日銀を『政府の子会社だ』とした安倍晋三元首相の発言を巡り、鈴木俊一財務相は13日の閣議後の記者会見で『会社法で言うところの子会社には当たらない』と話し、元首相の見解を明確に否定した。日銀の黒田東彦総裁も13日のオンライン講演で『日銀は政府が経営を支配している法人ではないと考えている』と述べた」(2022/05/14東京新聞)。4月9日、大分市の会合で安倍氏が語った発言への主務関係者の反論談話である。日銀は資本金1億円の株式会社、その資本金の過半5500万円は日本政府の出資である。それゆえ、日本政府を代表する内閣総理大臣はその筆頭株主だ、その私が選んで任命した日銀総裁は私の雇われ社長のようなものだ。かくて、憲政史上最長の時間を首相の座にあった安倍晋三代議士は、日本銀行を自分が支配する「子会社」のように思ってこれを扱ってきたということであるらしい。結果、日本銀行はゼロ金利というくびきに捕らえられ、政策の幅ゼロのニッチもサッチもいかないどん底にあえいでいる。
安倍氏はこの「講演」で、「1000兆円の借金(国債)の半分は日銀が買っているが、『日銀は政府の子会社』なので返済の満期が来たら、これを返さないで借り換えて構わない。心配する必要はない!」と語ったという。政府の「子会社」日銀は、四の五の言わずに政府の要求に従ってお札を印刷し、国債発行を引き受ければよいのだ、というのである。全ての扱いは「政府の意向でコントロール可能だ」と言いたいらしい。実際、アベノミクスの8年間はその通りに財政規律を放棄して、日本国は断然世界一の借金大国として歴史にその名を刻印したのである。
その筆頭株主安倍晋三氏から任命された黒田日銀総裁は、印刷しすぎた日銀券に囲まれて日銀金庫から外に出てこられなくなっているのであろう。次期総裁を引き受けようという貧乏くじを引く人も簡単には現れないようだ。日銀が印刷するお札は「紙」である。その究極の物質的価値は、燃やして3小カロリー程度、紙としてはメモに使えず、鼻紙にも使えない。筆者は、刷り過ぎたお札が無価値になる姿を父が大量に保管していた軍事債権の束として77年前にこの目で見たが、若い安倍氏には想像すらできないらしい。現に連日の世界の為替市場で「日銀券」の価値暴落が起こっているにもかかわらず。
松野博一官房長官は、10日の記者会見で「日銀の自主性は尊重されなければならない」と指摘。自民党の茂木敏充幹事長も「金融政策は日銀の自主性・独立性に委ねられるべきだ」(上記)と語ったという。正論である。日銀は日本政府の「子会社」ではないことに意味があるのである。
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