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2022-06-03 00:00
日韓関係も複眼的思考で
船田 元
衆議院議員
お隣の韓国で5年に一度の政権交代が行われ、保守中道の尹錫悦大統領が就任した。日本での呼び方がマスコミにより「ユン・ソギョル」「ユン・ソクヨル」「ユン・ソンニョル」と異なっており、できる限り呼称の統一が望まれる。文在寅(ムン・ジェイン)政権の時、日韓関係は戦後最悪とも言われる状況に陥った。言うまでもなく従軍慰安婦や徴用工問題などで、韓国側が日本政府との約束や取り決めを反故にしてきたからである。
日韓間の損害賠償請求権は、1965年の日韓基本条約と同時に批准された請求権協定により、全面放棄されている。私の祖父が衆議院議長の時の国会承認だったので鮮明に覚えている。しかしその後、従軍慰安婦問題が韓国内で再燃したため、1993年当時の河野洋平官房長官がお詫びの談話を発出、その後日本政府が出資する「アジア女性基金」が設立されて、元慰安婦の方々に対する補償や名誉尊厳を回復する活動が行われた。さらに2015年の日韓慰安婦合意に基づき「和解・癒やし財団」が設置され、元慰安婦や遺族への支援事業を行なってきたが、突如韓国側が一方的に解散手続きを取ってしまった。
一方、戦前韓半島に進出していた日本企業が雇った徴用工問題について、大法院は「国家間の請求権は解消したが、個人の請求権は存在する」として、2018年に日本企業に対して賠償金の支払いを命じた。その後日本企業の資産の一部が差し押さえられ、現金化されようとしている。これも請求権協定により解決済みの案件だが、一方的に韓国側が蒸し返した格好である。政権が変わっても国と国との約束は守らなければならないのが国際法上の決まりであり、韓国側の対応は非難されなければならない。
しかし日韓関係はアジア・太平洋において重要な意味を持ち、ミサイル発射を繰り返す北朝鮮や軍備拡張や海洋進出を強行する中国に対峙するには、日米韓の安全保障上の結束は非常に大切である。日米、米韓それぞれの関係は良好だが、日韓関係がうまくいかないとその効果は半減する。ロシアのウクライナ侵略により、ロシアや中国の脅威が格段に高まっている。東アジアの安全保障を確かなものにするためには、韓国の政権交代を奇貨として、関係改善のための話し合いを始めるべきである。もちろん韓国の言い分を聞いた、安易な妥協をしてはいけない。しかしいつまでも我が国の主張のみを繰り返し、頑なに話し合いを拒否するのも好ましくない。大局的見地に立ち、聞く耳を持ち、戦略的に解決する努力を惜しんではならない。前回の投稿でウクライナ危機における「複眼的外交」の必要性を説いたが、今回もまさにそれが求められているのではないか。
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