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2022-06-08 00:00
(連載2)ロシアの大誤算と待ち受ける苦境
赤峰 和彦
自営業
また、ロシア軍は、前述の通りすでに三分の一の兵力を失ったとされ、普通に考えれば撤退せざるを得ない損失です。ただ、プーチン氏の面子がかかった「特殊軍事作戦」を断念する政治的なコストは莫大なものでしょうから、プーチン氏の身の上に大きな変化が起きない限りこの戦争は長引くでしょう。そうなるとロシア国民はますます疲弊し、国家の行く末が全く見えなくなってきます。
最も懸念されるのは、ロシア発の世界的な飢餓問題です。ロシアは農業国家でもあり、穀物類の輸出はロシアの収入源の一角を占めています。ところが、ロシアはウクライナ侵略開始から18日後に小麦と砂糖の輸出を制限、同時にロシア主導のユーラシア経済連合(ベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスで構成)への小麦、ライ麦、大麦、トウモロコシなどの穀物の禁輸を決定しています。いずれも「食糧安全保障の確保のため」と説明していますが、ロシアには自分の味方となる国にさえ禁輸しなければならない状態になっています。このあおりをうけて、ロシア産の農産物を輸入していた国は飢餓に直面することになります。それゆえ、食料をめぐっての争奪戦が世界中で巻き起こる可能性があります。また、甘いものなら何でも食べると言われるロシア人にとって、砂糖不足が深刻になるという予測は頭を抱える問題でしょう。原料となるサトウ大根(ビート)の種子はほとんどが輸入だからです。甘いものに飢えた民衆が暴動を起こさないとも限りません。フランス革命にせよ、中国の王朝交代にせよ、食の問題が暴動と革命を引き起こしている事実は直視しなければなりません。
ところで、ロシアという国家が統治機能に不全を来した場合、物理的、軍事的空白地帯が広がりますから、広大な大地に他民族が一斉に流れ込む可能性があります。おそらく中国人が最も多いはずです。すでに20世紀の終わりごろから中国人の越境が問題視されていましたので、ロシアという国が弱体化したら中国人の流入は避けられないと思います。なにせ、5000キロメートル以上もある長い国境線です。この人口流入を妨ぐ方法はありません。
ウクライナ侵略というパンドラの箱を開けて世界中に害悪をまき散らしたロシア自身も、強気のプーチン氏とは裏腹に、不確実性が急激に高まり国内に混沌が渦巻いています。このままでは体制の崩壊への道を突き進むのは必至ですが、それはすぐにではありません。このロシア・ウクライナ戦争を迅速に終わらせる外交的な道筋がいまだにつかない以上、残念ながらプーチン政権が耐えられなくなるその日まで、ウクライナの悲劇は続きそうです。(おわり)
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