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2022-06-09 00:00
(連載1)共産主義という考え方について
荒木 和博
拓殖大学海外事情研究所教授
私は、中学生のころからマルクス主義とか共産主義とか科学的社会主義の考え方が嫌いで、それがかつて民社党に入った最大の理由でもありました。今となってはもうかなり古い思想で、北朝鮮でも共産主義政策は、最近はほとんど聞いたことがありません。一部そういうものも行っているのかもしれませんけれども、金日成から続くこの体制はもう共産主義というよりは王朝と言ってしまったほうが実態を表しているといえます。中国は共産党が支配していますけれども、いざというときに全ての経済的権利を共産党が掌握するという部分以外は共産主義が経済から消え去り、党による独裁体制という政治的な部分だけが残ったために、貧富の格差は歴史的なレベルにまで開いてしまいました。今こそ中国に共産主義革命が必要なんじゃないかとすらおもいます。ロシアは、最近の国勢の陰りからか、まるで亡霊に取り憑かれたようなソ連時代への懐古主義が目立ちますが、あれこそ共産主義の失敗の代表例のようなものです。結局のところ共産主義が資本主義に勝ったり優位を示したりした例はありませんでしたし、根本的に間違っていることに間違いはありません。
共産主義運動というのは、掻い摘んで言えば、共産主義社会になれば全ての問題が解決するのだからそこに至る過程はどんな手段でも合理化されるという考え方です。人が命を落とそうとも、民衆を弾圧しようとも正当化され、これに反対する人間はみな階級の敵として抹殺されて然るべきであるということです。
大分前に「本当の人権を擁護して」という北朝鮮の論文を翻訳したことがありました。もう30年ぐらい前だったでしょうか。階級の敵に対して人権は必要ないという内容で、こういう主張がアカデミックな世界で通用してしまうのが共産主義から生まれた国の現実です。
まっとうな宗教活動をされている熱心な方には大変失礼なのですが、一種の宗教、狂信的なカルトに近い空間がそこにはあります。それを信じている限り、そこへ行き奉仕をせっせとする限り、幸せになれるという確信が共有されており、信者は周りが見えなくなる(逆に指導者側は様々な仕掛けや論法で何も見えなくするわけです)。そこに至るには様々な理論付けというものがあり、その理論のメガネから見た世界では、今まで理解できなかった社会の動きや様々な理不尽に、「世の中こういう風に組み立てられていたんだな」と説明がついた気がする。納得できると、非常に気持ちが落ち着き、不安が和らぐ。(つづく)
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