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2007-10-17 00:00
日中関係、安定軌道の維持を
鍋嶋敬三
評論家
日中国交正常化から今年で35周年を迎えた。小泉政権下の靖国神社参拝問題でぎすぎすした雰囲気の30周年とはうって変わり、日中関係は安定した軌道を走りつつある。2006年10月の安倍晋三首相の訪中、今年4月の温家宝中国首相の来日と首脳の相互訪問が復活、両国関係は改善に大きくかじを切った。安倍首相訪中では首脳間で「日中関係は最も重要な二国間関係の一つ」という共通認識の下に、両国の利益を拡大する「戦略的互恵関係」の構築で合意した。中国は日本の戦後の平和国家としての歩みを初めて文書で認めた。外務省の2006年度政策評価書で日中関係に相当な進展があったと高く評価したのはこのような実績を受けてのことである。
中国の対日感情も好転しているようだ。「言論NPO」と北京大学の世論調査で中国側の日本に対する印象が昨年に比べて改善したと伝えられる。2005年、中国で激しい反日デモが起きたが、政治関係の改善を受けて中国側も国内の反日の動きを抑制しているようだ。8月には尖閣諸島に対する中国の領有権を誇示するため香港を出ようとした抗議船の出港許可が取り消された。良好な対日関係の維持という中国政府の意図が働いたとみてよいだろう。
とは言っても、日中間には尖閣諸島、東シナ海のガス田開発、歴史認識など対立と緊張の種はいくらでもある。今年は日中戦争の始まりである廬溝橋事件から70年の節目である。12月13日は南京陥落の日であり、日中双方で「南京事件」をめぐる論争が活発になりそうだ。政府間合意で昨年から続けられている歴史共同研究は両論併記になる方向だが、歴史問題で厳しい政治的対立を招かないよう一定の役割を果たすことはできるだろう。せっかく走り出した安定軌道を外さないための努力が必要である。
日中間に国交がない時代には、政府に代わって与野党の政治家がパイプ役になり、関係の構築に汗を流した。その中のひとりに日中友好議員連盟会長や法相を務めた古井喜実氏がいる。1969年には「米中関係は早ければ3年以内に大きな変化が起きる」と予言した。1971年7月、ニクソン大統領の訪中合意発表の2年前であった。「日本の将来に関する最大の問題として日中関係がある」との持論を展開していた古井氏は中国の古典を引いて「誤って、両国争えば共に傷つくことは、厳粛な歴史の教訓である」と述べている。来年は福田康夫首相の父でタカ派と言われた赳夫首相が日中平和友好条約を実現させてから30周年。先人の苦労を無にせず、大局的な見地から日中関係の安定を確実にするため先見の明ある政治家に一層の努力を期待したい。
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