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2022-06-10 00:00
(連載2)共産主義という考え方について
荒木 和博
拓殖大学海外事情研究所教授
そしてそれを説く原理原則が教科書として存在し、従わない者は悪いやつだということで活動をしていく。しかし、問題はその教科書が正しいかどうかということにあります。20世紀の100年間で、共産主義というイデオロギーのために、1億人以上の人が命を失っています。犠牲になった人々としては中国の民衆が一番多いでしょう。旧ソ連は言うまでもありません。北朝鮮は今でも嘘とイデオロギーの糊塗のために犠牲者を出し続けています。共産主義が正解であったのか間違いであったのかということは、分断国家である韓国と北朝鮮を比べれば1発でわかります。もちろん韓国もいろいろな問題がある国として始まり、今でも問題を抱えていますが、この二カ国を比べてどちらが住みやすいか、どちらがより多くの国民を幸せにしているかと考えれば、もう誰が見ても分かることです。正確な情報に触れられる一部の北朝鮮の人間は自分の国が間違っているのも本音では理解しているはずです。
興味深いのは、人間のコミュニティでは間違っている理屈の方がよく通ってしまうことがしばしばあることです。一旦その理屈が頭に入ると変えることができない。というのも、ある思想、ある主義を信じていた人がどこかで間違っていたと認めるためには自分の選んできた人生を否定しなければいけなくなるので、それを清算する痛みを思うと向き合えず間違ったまま進んでしまうのです。
これはカルトに入った人の心理と同じです。自分の所属している集団がカルトだと気がついてもそれを否定することは、難しい。その集団内組織の中では、メンツやコスト、リスク、人間関係などから縁を切ることがしづらく思いとどまってカルトを続けてしまうのです。また、現世利益的な話になりますが、共産主義、マルクス主義とかに限らず、それが「マーケット」として成り立っているために、政界にしろ出版業界にしろ、間違っているのを内心わかっていても、その源泉がいずれ枯れるとわかっていても、そのパイから経済的利益が得られなくならない限り居続けてしまうという人たちもいます。意を決してそこから飛び出せばいいのですが、それをする勇気がない人も中々多いのです。
私がいた民社党の民主社会主義は、共産主義というイデオロギーに対して一番戦ってきたイデオロギーだったと私は思っています。本当の意味での社会主義は、科学的社会主義とかマルクス主義とかとは全く違うものだからです。他方、自民党は自由主義と民主主義の代表のように振る舞っていますが、共産党とイデオロギーの土俵で戦って勝ったわけではありません。私が自民党に行かなかったのは、そういう部分にあったように思います。(おわり)
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