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2022-06-21 00:00
(連載1)日本共産党「共産主義」放棄が不可欠
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
最近刊行された一橋大学大学院教授中北浩爾氏の著書「日本共産党<革命を夢見た100年>中公新書」(以下「本書」という)は、日本共産党の100年の歴史を国際共産主義運動との関連において詳細に分析し総括しており、理論的水準が高い。日本共産党に関しては、古くは評論家立花隆著「日本共産党の研究」(昭和53年「講談社」)や、筆坂秀世著「日本共産党」(2006年「新潮新書」)、最近では佐藤優・池上彰共著「日本左翼史」(2021年「講談社現代新書」)などがある。しかし、理論的水準の高さにおいて本書は出色と言えよう。
本書から、日本共産党が、常にその戦略・戦術を目まぐるしく変転させてきた歴史が見て取れる。党綱領五に規定されている「社会主義・共産主義の実現」(「二段階革命論」)は、ほぼ一貫しているが、実現のための戦略・戦術は一貫せずに極めて変転してきた。典型的な事例は、1950年代前半の徳田球一・野坂参三・志田重男指導部による「平和革命路線」から「暴力革命路線」への転換と、数年後における「平和革命路線」への回帰である(日本共産党中央委員会著「日本共産党の70年」上巻240頁。1994年新日本出版社)。「武装闘争方針は中・ソ両国共産党の強要であり、日本共産党の追従であった」(本書238頁)とされ、国際共産主義運動の「権威」に追従する脆弱な党の姿を示している。今後も戦略・戦術の変転は激しいのであろう。日本共産党には、社会主義革命を成し遂げた中・ソ両国共産党に対するコンプレックスが見て取れる。
本書では、日本共産党は、単独では到底政権を取れず、政権に近づくためには必ず他の野党との「連合政権」ないし「連立政権」への参加が不可欠であることを示唆している。私見では、ここに日本共産党の最大の弱点がある。1970年の「民主連合政府」提唱、2015年の「国民連合政府」提唱、2020年の「野党連合政権」提唱など、いずれも実現していないのであり、その意味で、日本共産党の失敗の歴史は枚挙に暇がない。失敗の最大の原因は、他の野党及び国民からも旧ソ連共産党・中国共産党と同様とみられる党規約2条の「共産主義イデオロギー」(「マルクス・レーニン主義」)に対する固執と、安保条約廃棄、自衛隊違憲解消という、「抑止力」(「反撃能力」)を完全に否定した安全保障政策にある。中北氏によれば日本共産党の安全保障政策は、旧日本社会党と同じ「非武装中立」である(本書304頁)。
まず、安全保障政策について、日本共産党は、軍事対軍事の対応はエスカレートし、戦争を誘発する危険があると主張し、防衛力の強化に反対する。しかし、「抑止力」(「反撃能力」)が低下することで「力の空白」が生じ他国の侵略を誘発することは明白である(小泉信三著「私の平和論について」小泉信三全集第10巻463頁。昭和42年文藝春秋社)。今回のロシアによるウクライナ侵略がこれを証明している。米国を軍事侵略する国が皆無なのは、米国が核を含む強大な「抑止力」を保有しているからである。(つづく)
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