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2022-06-25 00:00
(連載2)物価・為替政策に対する岸田政権の不作為
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
基本的に物価は「需要と供給のバランス」で成り立っているが、物価が安定感を失うと、その物価を釣り上げる行為で儲けている人が存在感を増す。ウクライナで起きているような戦争と言う「物流や物資供給の途切れ」は、物理的な理由によってのみではなくそう投機的な試みの影響を受ける、このような場合、日本政府や大企業は大局的な見地から「国家存亡の危機」に対処しなければならないのであるが、なぜか日本の企業は国家の存続よりも企業の存続を優先してしまい、内部留保を厚くすることに執心してしまう。
至近な例として3・11によって原子力発電所がすべてストップしたときのことを思い出してほしい。当時は温室効果ガス削減目標を達成するために原発を推進し火力発電を削減する方向であったから、エネルギーミックスは滅茶滅茶になった。エネルギー政策の崩壊は正しく国家存亡の危機である。当時電力各社は火力発電を復活させ、石炭や石油の輸入が増える。本来ならば、石油商社や電力会社は、利益を度外視しても供給を安定させるべきだ。しかし、2012年の決算を見ればわかる通り、石油輸入商社や電力会社は、軒並み「史上最高益」を出しているのである。要するに「危機に瀕しているのを横目に最も大きく儲けていた」ということになるのである。
さて、新型コロナウイルスの蔓延やロシアによる他国への侵略といった未曾有の危機が世界経済に大打撃を与えているが、バイデン大統領も岸田首相も、十分に手を打たない。企業から献金を受けるようなことはしておきながら、他方で国民を直撃する物価高対策はあまりに遅い。それに対して、マスコミが騒ぐこともないのである。
戦争を終息させ世界の貿易を正常化するのは難しいことではないかと思うが、一方で、国民の実質所得が低減していく中「史上最高益」を吐き出す大企業が多数出るような状況は是正すべきだ。しかし、日本では「政治による民間企業への不介入」「経済の自由」という原則から直接的に企業に指導する事ができる場面は限られる。ではどうするのか。戦前では、物価対策に失敗した首相への暗殺事件が起き歴史が動いたが、現在はそのような時代ではない。暗殺事件を推奨しているわけではないし、悪漢が首相を暗殺したところで現代日本政治は揺らがないだろう。だが昔であればそのようなことが起きたかもしれないほどに物価や為替というものは国民感情に影響するのだという問題意識を岸田首相が持つということが重要である。「金解禁」とまではいかなくとも明確な失策をしていないからよいというのには違和感がある。国際情勢を言い訳に経済問題が放置されるという不作為を好意的に受け止めるようでは甘いのではないか。参院選でも自民党が勝ち、岸田政権が続くようであれば、そのまま国民が甘んじて受け入れなければならないという認識が追認がなされたということになるのである。本当にそれでよいのであろうか。(おわり)
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