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2022-07-05 00:00
(連載1)日本から見たNATO加盟の利点
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
NATO(「北大西洋条約機構」)は、米・英・仏・独など、米国およびヨーロッパの自由民主主義諸国が加盟している「集団防衛体制」(軍事同盟)である。NATOは第二次大戦後の1949年に旧ソ連に対抗するために米英を中心として設立された。NATOの本部はベルギーのブリュッセルにある。NATOは集団防衛・危機管理・協調的安全保障の三つを中核的任務とし、加盟国の領土及び国民を防衛することを最大の責務としている。加盟国は外部からの攻撃に対して相互防衛に合意し、集団防衛のシステムを構成している。現在の加盟国は30か国に達している。
NATO設立後、これまで加盟国が侵略された事例は皆無であり、NATOは「集団防衛」すなわち国連憲章第51条の集団的自衛権に基づく強力な抑止力を保有している。今回のロシアによるウクライナ侵略も、仮に、ウクライナがNATO加盟国であったならば、起こり得なかったと言える。なぜなら、ロシアは、多数のNATO加盟国を敵に回すことになり、米英仏独など30か国の核戦力を含む強力な軍事力にはロシア一国では到底対抗できないことは明らかだからである。仮に、ロシアがNATO加盟国であるウクライナを侵略した場合は、当然米国をはじめNATO諸国から「集団防衛」(集団的自衛権)に基づく全面的反撃を受け、ロシアの戦争目的の達成は不可能または著しく困難である。これはロシアに対する強力な抑止力になる。
NATOの抑止力は、ロシアだけではなく中国、北朝鮮に対しても極めて有効である。なぜなら、中国および北朝鮮の通常戦力及び核戦力は明らかにNATOに劣るからである。最近、中国および北朝鮮はNATOのアジア地域への拡大である「アジア版NATO」構想の動きを恐れ「冷戦思考」などと厳しく批判しているが、これはアジア地域におけるNATOの集団防衛体制確立に対する両国の危機感と警戒感の表れである。将来、台湾や韓国がNATOに加盟すれば、「台湾有事」や「朝鮮半島有事」は強力に抑止されることは確実である。
日本はNATOとグローバル・パートナーというNATOの域外協力国としての協力関係にある。すなわち、日本とNATOは自由と民主主義の価値観を共有するパートナーとして、サイバー、海洋安全保障、人道支援、災害救援、危機管理など、国際協力分野における協力を重ねている。日本はベルギー・ブリュッセルにNATO日本政府代表部を設置している。(つづく)
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