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2022-07-11 00:00
東部ルガンスク州陥落も先が見えない長期戦に
飯島 一孝
ジャーナリスト
ロシア軍とウクライナ軍との戦闘は4カ月目に入り、ウクライナ東部のドネツク州をロシア軍が制圧できるかどうかが焦点になってきた。ドネツク州は、ルガンスク州と並んで、ウクライナ東部の中でロシア系住民が最も多い地域である。この州を制圧すれば、ドンバス地方全体を抑えることになるため、ロシア軍は残る部隊を大量動員して戦いを仕掛けて来ると見られる。
プーチン大統領は一時、今秋にも開かれる予定の第二次大戦の終戦記念日に絡んで、対ウクライナ戦での勝利を宣言する考えではないかと見られていた。そのため、ウクライナ東部のルガンスク州に続いてドネツク州も制圧し、その成果を大々的に発表し、対ウクライナ戦争の幕引きを狙っているとの見方が出ていた。だが、その見方も、ウクライナ東部の戦闘が長引いたため、今やすっかり消えている状況だ。
一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、プーチン大統領の目論見をぶち壊そうと、自軍の部隊にハッパをかけると同時に、米国などの欧州諸国に対し、最新兵器や資金援助を要請している。だが、同じ欧州諸国でもロシアから石油・天然ガス類を購入しているドイツなどと、輸入に頼っていない米国などとの温度差が広がりつつあり、一枚岩にはなっていない。今後、欧州諸国の足並みをどう揃えて行くのかが焦点になってくるだろう。
日本も西側諸国の一員として、米国などと足並みを揃えているものの、ドイツと同様、ロシア産の石油・天然ガスを購入している身である。特に緊急課題になっているのは、極東サハリンの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の権益・資産をロシアの管理下に置くプーチン大統領令への対応である。このまま日本企業がこの事業から撤退することになれば、その影響は計り知れない。この問題をうまくまとめないと、岸田内閣の命取りにもなりかねない。ロシアとウクライナの争いは、最終的にはプーチン大統領がどの段階で停戦協議に乗って来るかだ。笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は毎日新聞とのインタビューで「プーチン氏の戦略目標が『ウクライナを取り戻す』ということならば、ウクライナの中立化を軸にした停戦協議は恐らく成立しない」と、今後の見通しを語っている。そうなれば戦闘は先が見えない長期戦になる。関係各国は今こそ、ロシア、ウクライナ双方が歩み寄れる手立てを早急に探って行く必要がある。
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