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2022-07-13 00:00
昨年のバイデンとゼレンスキーの動きから読むウクライナ戦争の今後
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
日本だけではなく、世界の大多数の人々はヴォロディミール・ゼレンスキーという名前を知らなかったと思う。ヨーロッパ政治に関心がある人たちはそうではなかっただろうが。また、アメリカ政治に関心がある人々であれば、「ドナルド・トランプ前米大統領が、ウクライナ国内でのジョー・バイデンと息子のハンター・バイデンの動きについて圧力をかけた相手」として名前が出てきて覚えていた人も多いだろう。しかし、2022年2月24日のウクライナ戦争勃発以降、今や世界中で知らない人はいないような有名人となった。
ウクライナ戦争は2022年2月24日に始まったが、ウクライナはロシアをめぐって不安定な状況にあった。2014年にクリミア半島はロシアに併合され(西側諸国はそれを認めていない)、ロシア系住民が多い東部地方では分離主義勢力が自治を行ってきた。ウクライナ軍とアゾフ大隊はこうした状況に対処してきた。
バイデン大統領になり、アメリカはウクライナ支援を明確化した。昨年は2度の電話会談の後(4月と6月)、9月1日にバイデン大統領とゼレンスキー大統領は直接会談を持った。ホワイトハウスを訪問し、アメリカの大統領と直接会談を持つことは、ゼレンスキーとウクライナ側の「悲願」だった。アフガニスタンからのアメリカ軍撤退とそれをめぐる混乱から、会談の日程が変更されたこともあったが、ゼレンスキーにとっては大きな前進となった。この当時から対ロシア侵攻を想定して、軍事支援が行われていた。それ以前に、2014年以降で、ウクライナには合計で46億ドル規模の支援が実施されていた。年で割ればおおよそ6億5000万ドル、だいたい750億円の軍事支援が実施されてきたことになる。ロシアからの観点からすれば、これは大きな脅威だ。国際関係論で言えば「安全保障のジレンマ(security dilemma)」ということになる。
昨年、アメリカは外交上、パッとしなかった。アフガニスタンからの撤退をめぐってはタリバンが復権する結果になり、「何のために大きな犠牲を払ってアフガニスタンに侵攻し、駐留したのか」ということになった。アメリカへの信頼性を大きく損なうことになった。そうした中で、ウクライナ戦争が起きた上は、ヨーロッパの同盟諸国に対してのアピールもあって、アメリカはウクライナを支援し続けることになる。しかし、アメリカの国力は大きく低下している。そうした中で、いつまで続くのか、続けるのか、ということがアメリカで議論されることになるだろう。そして、「何故早く停戦させなかったのか」という大きな疑問が西側諸国の指導者たちに突きつけられることになるだろう。
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