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2022-07-28 00:00
(連載2)「安倍国葬反対」の仮処分申請は認められうるか
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
以上により、「安倍国葬」に伴う予算額が上記「国の儀式」に必要とされる適正妥当なものである限り、当該予算執行は違法ではないから、予算執行が国民に不利益を与えるものとは言えない。また、上記の通り、「安倍国葬」は国民に強制するものではないから、国民の思想良心の自由を特段侵害するものとも言えない。よって、本件仮処分申請には法律上の「被保全権利」が乏しく、却下される可能性が高い。
(3) 保全の必要性とは、仮処分をしなければ著しい損害や急迫の危険が生じる恐れがあることである(民事保全法23条2項)。裁判所は「保全の必要性」については必ずしも厳格ではないから、本件の場合も「保全の必要性」を理由に却下される可能性は低い。本件は「被保全権利」の有無・程度が最大の争点であり、上記の通り、「被保全権利」は乏しいから、却下される可能性が高い。
完全無欠の政治家は稀であろう。中国の毛沢東も「功」7、「罪」3とされている。「功」は社会主義革命の成功であり、「罪」は大躍進政策と文化大革命の失敗である。安倍元首相も、「功」は「積極的平和主義」に基づく自由で開かれたインド太平洋戦略の確立、平和安全法制による日米同盟の抑止力強化、アベノミクスによるデフレ脱却・雇用拡大、防衛庁の防衛省への昇格などである。「罪」はモリカケ・桜問題である。しかし、何よりも外交面での功績は大きい。死去した安倍元首相に対する、国連をはじめ世界各国首脳からの極めて高い評価がこれを証明している。
毛沢東に対する評価と同様に、政治家の「功」と「罪」は総合的・弁証法的に評価すべきである。共産党・社民党などの一部野党や本件仮処分申請をした市民団体は、安倍元首相の上記「功」の部分を一切認めず、「罪」の部分のみを強調し激しく攻撃している。到底公正妥当な評価とは言えない。国民の支持がなければ8年8か月の政権運営は不可能である。安倍元首相の「功」と「罪」を総合的・弁証法的に評価すれば、8年8か月の首相在任期間において、日本の国益を増進させた点で、「功」が「罪」よりも遥かに大きい。安倍元首相に対する諸外国からの極めて高い評価を日本国民は無視すべきではない。「国葬」は諸外国からの高い評価にこたえるものでもあり、法的にも政治的にも極めて妥当である。(おわり)
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