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2022-08-23 00:00
(連載1)日本政府は中台関係の「平和共存」に尽力せよ
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
米国民主党ペロシ下院議長は8月2日台湾を訪問し、翌3日には台湾の蔡英文総統と会談した。ペロシ氏は会談で「台湾と世界の民主主義を守るための米国の決意は揺るがない」と述べ、蔡氏は「軍事威嚇に対して台湾は退くことなく、民主主義の防衛線を固く守り抜く」と応じた。ペロシ氏の訪台に対して、中国の王毅外相は談話を発表し、「中国の主権を侵害し、政治的挑発を公然と行った。米国は台湾海峡の平和と地域安定の最大の破壊者になっている」と強く非難した。そして、対抗策として、中国軍は8月4日から台湾を取り囲む6か所の海域で大規模な軍事演習を行った。
ペロシ氏の訪台は米国下院議長としては1997年以来25年ぶりであり、明らかに今年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻を念頭に置いたものである。すなわち、ロシアによるウクライナ侵攻は、米国民主党バイデン大統領の「軍事介入をしない」というロシアに対する「弱腰」の対応がもたらしたものとの批判が、共和党トランプ前大統領をはじめ米国内に根強くあり、民主党ペロシ氏としては、米国が台湾を守る意思を明確にして、ウクライナ侵攻の二の舞を回避する狙いがあるものと考えられる。
しかし、ペロシ氏の訪台に強く反発した中国による台湾周辺海域での大規模な軍事演習により、ペロシ氏の訪台が中国を刺激し「台湾有事」の危険性がかえって高まった。なぜなら、今回の中国軍による大規模な軍事演習は、台湾を東西南北から完全に包囲する形で行われており、実際の台湾侵攻の「予行演習」の意味合いを持つからである。中国軍による実際の台湾侵攻では、中国軍は台湾を包囲する6か所以上の海域から一斉に上陸作戦を含め大量のミサイル攻撃や艦砲射撃等の攻撃を同時に全面的な電撃作戦として遂行する公算が大きい。のみならず、中国大陸沿岸部からの大量のミサイル攻撃及び戦闘爆撃機による台湾本島の軍事基地や重要インフラ等に対する空からの攻撃や大規模なサイバー攻撃などもありうる。そうなれば、台湾側の反撃防御態勢が6か所以上に分散される危険性がある。この点が台湾側の最大の弱点であり懸念材料と言えよう。
このような中国軍による同時全面的電撃作戦は、ロシアによるウクライナ侵攻作戦の長期化という「失敗」を教訓にしたものであり、米軍の本格的軍事介入を阻止し、米国による大規模な武器援助の前に決着をつける「短期決戦」を狙ったものと言えよう。このような電撃作戦は同じ中華民族である台湾住民に「敗戦気分」や「厭戦気分」をもたらす可能性が高い。私見では、「台湾有事」に対する米軍の本格的軍事介入はないとみる。なぜなら、台湾は米国の同盟国ではないこと、米軍の本格的軍事介入は核を含む米中の全面戦争に発展する危険性があること、中台戦争は中華民族同士の一種の「内紛」「内戦」とみられること、などによる。そのため、米国議会は軍事介入を承認せず、ウクライナに対するのと同様な台湾への武器援助にとどめる公算が大きい。(つづく)
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