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2022-09-15 00:00
(連載1)「安倍国葬差し止め仮処分」申請却下の意味
加藤 成一
外交評論家(元弁護士)
安倍晋三元首相の「国葬」に関する閣議決定の取り消しや、関連予算執行の差し止めを求める市民団体メンバーによる仮処分申請は、これまで、東京地裁をはじめ、大阪地裁、横浜地裁、さいたま地裁の各裁判所に対して行われた。しかし、市民団体による仮処分申請は東京地裁、大阪地裁、横浜地裁、さいたま地裁において、悉く却下されており、仮処分申請を認めた裁判所は皆無である。東京高裁は東京地裁の却下決定に対する抗告も棄却している。市民団体による本件仮処分申請の主たる理由は、(1)国葬に法的根拠がない、(2)閣議決定のみによる予算執行は違法である、(3)国民に弔意を強制し憲法19条の思想・良心の自由を侵害する、というものである。
東京地裁は8月2日、閣議決定がすでに行われているから「差し止めを求める利益がなく不適法」と判断し、予算執行に関しても「個々の国民に弔意を表すことや喪に服することを強制するとは認められない」として仮処分申請を却下した。また、当事者間に具体的な権利義務関係がないとも指摘した。東京高裁は8月29日、東京地裁の判断を支持し、市民団体側が主張する閣議決定に対する行政事件訴訟法による執行停止は重大な損害を避けるため緊急の必要がある場合に限られるとして「適用の余地はない」と指摘し、予算執行の差し止めも根拠法がなく、「申し立ての理由がない」として抗告を棄却した。
さいたま地裁も9月5日仮処分却下の決定をした。却下決定理由は、市民団体のメンバーらに「固有の損害が発生するとは考えにくく、仮処分を認める緊急の必要性があるとも言えない」というものである。大阪地裁も9月9日「閣議決定は国民の権利義務に直接影響を与えるものではない」として仮処分を却下し、横浜地裁も9月9日「重大な損害を避けるために緊急の必要があるとは言えず、要件を欠く不適法な申し立てである」として仮処分を却下した。
以上の各裁判所による仮処分却下決定の共通点は、2022年7月27日付け「百花斉放」掲載拙稿「安倍国葬反対の仮処分申請は認められうるか」で指摘した通り、市民団体の個々のメンバーには、仮処分の要件である「被保全権利」が存在しないということである。すなわち、本件「国葬」の差し止めについて、個々のメンバーには法律上保護されるべき具体的な利益や権利が認められないということである。この点は、東京地裁も「当事者間に具体的な権利義務関係がない」、さいたま地裁も「固有の損害は発生しない」と指摘している通りである。上記拙稿でも指摘の通り、仮処分の要件である「当事者適格」自体を欠くとも言えよう。そのうえ、さいたま地裁や横浜地裁は、仮処分を認める緊急の必要性を否定しており、仮処分の要件である「保全の必要性」も否定しているのである。(つづく)
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