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2022-09-26 00:00
(連載1)世界の中絶問題を考える
濱田 寛子
産婦人科医師
11/8の米中間選挙に中絶問題が大きく影響していると報道されている。共和党が中絶禁止を進めることへの警戒感からだという。確かに、6/24に連邦最高裁が人工妊娠中絶を選ぶ権利を女性に認めた判例を覆し、州による中絶禁止を容認した影響は大きい。中絶を希望する女性は、州や国を変えて手術を受けに行かねばならないし、経済力のない場合は手術を受けることが出来ない。貧困に拍車がかかるのは目に見えている。それは、社会不安につながる。
本来、1994年国際人口開発会議ににおいて、セクシャル・リプロダクテイブ・ヘルスライツ(SRHR)として、女性は一生涯を通じて性と生殖の健康を維持する権利を有するとうたわれた。出産、避妊、中絶の選択権は当事者である女性が有するのだが、女性自身の健康の為にも、地球人口の適正化の為にも不可欠である。
世界人口の推移をみると、20万年前から西暦1800年ごろまで世界人口は10億人以下であった。10億人に達するまで10数万年を要しているのである。10億から20億まで130年。20億から30億まで30年。30億から40億まで15年。2050年には97億人に達すると推計されている。12年で10億人ずつ増加していく計算になる。この急速な人口増大による影響は、食料需要の増大、資源消費による枯渇、経済格差、砂漠化、温暖化、世界中の紛争の火種となってしまう。この時、「人口は数の問題ではなく、ひとりひとりの生活の質の問題である」という認識のもと行動計画を179か国が合意批准している。米国の最高裁判決は時代に逆行という他ない。
ルーマニアの少子化防止の政策は有名である。時の大統領チャウシェスクは少子化を防ぐために、離婚と中絶を禁止した。「国力は人口なり。国民を増やさないと工業化・経済発展が出来ない。45歳未満の女性は子供を4人産むまで中絶禁止。避妊具は非合法化。」とうたい、親に遺棄された児の施設の環境劣悪化を招き、児を死なせたら施設庁は厳罰を受け、栄養失調に輸血を行ってAIDSが蔓延、政権崩壊後子供たちがマンホール生活者となり、成長してギャングになった。中絶を禁止すると、非合法中絶による母体死亡率の上昇・子殺しで殺人罪に問われて女性自身が傷つく。生まれなければよかったのだと虐待を受けたり、養育施設が限界に達して、子供が傷つく。社会に恨みを持つ子供集団がギャング化して社会の治安が悪化して、社会が傷つく。これが、ルーマニアの教訓である。(つづく)
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