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2007-10-28 00:00
テロ支援国家指定外しは米朝間の問題
吉田康彦
埼玉県大阪経済法科大学客員教授
北朝鮮の核廃棄をめざす6カ国協議がヤマ場を迎えている。北朝鮮は、11月1日から既存の核施設の「無力化」に取りかかり、全核計画の「申告」も2週間以内に開始するという。その間、北朝鮮によるシリアへの原子炉供与の疑惑が浮上し、功を焦る国務省に米議会から批判も出ているが、全体として北東アジアにおける核開発と核拡散の脅威を解消する努力は評価し、支援すべきと考える。
そうした中で、拉致被害者家族は訪米して、拉致問題が解決しない限りブッシュ政権が北朝鮮をテロ支援国家指定から外さないよう陳情し、11月下旬に訪米する福田首相も同じ立場から、拉致問題解決のための協力を要請するという。
私が知る限り、年末までに米国が北に対するテロ支援国家指定を解除する方針に変わりはない。米国がそれをしないと、6カ国協議で確認された「同時行動の原則」で、北も「無力化」と「申告」を履行せず、朝鮮半島非核化のプロセス全体が止まってしまう。止まるどころか、むしろ逆流し、北は核開発を再開するだろう。
本来、テロ支援国家というのは、過去1年間に米国に対してテロ行為ないしは支援行為が存在したか、過去の行為が未解決か否かで判断し、米国務省が毎年更新しているものだ。現在、北朝鮮のほかは中東・アフリカの5カ国が名を連ねている。北朝鮮が問題にしているのは、対敵国貿易法が適用され、対「北」経済制裁の根拠になっているほか、世界銀行、アジア開発銀行など国際金融機関への加盟を阻まれ、外資を誘致できないことにある。指定解除が実現しないと、いくら近隣諸国が経済・エネルギー支援をしても限界があるわけだ。
拉致はたしかに国家テロだが、あくまでも日朝2国間の懸案であり、拉致問題解決がブッシュ政権による指定解除の前提条件ではないことは、ライス国務長官が明言している通りだ。懸案は「日朝国交正常化の過程で誠意をもって解決すること」が小泉訪朝の際、署名した「日朝平壌宣言」に明記されている。日本政府は同宣言で、「過去の清算」の一環として大規模経済協力を約束しており、独自のカードを保持しているのだ。
日朝関係が膠着化しているのは、北朝鮮側が、安倍前政権は「拉致問題の未解決」を右傾化政策推進の口実にして、国交正常化と「過去の清算」を履行する意思がないと読んでいたからだ。宋日昊・日朝交渉担当大使らが「拉致は解決ずみ」と繰り返していたのは、そのためである。福田首相は日朝関係打開を模索しているようだが、この際、拉致解決を前提とせず、拉致・核の解決と「過去の清算」を同時並行で進める包括的解決策(いわゆる「出口論」)を掲げて真剣に交渉すべきである。
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