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2022-10-14 00:00
習近平独裁体制の行方
赤峰 和彦
自営業
中国の権力体制を固める第20回共産党大会が10月16日から開かれます。党大会は中国共産党の指導体制や基本方針を決める最高意思決定機関で5年に1度開き、党幹部である約200人の中央委員らの選出のほか、党規約の改正や重要な政策課題を討議します。会期は一週間で、閉幕後に中央委員会第1回全体会議を開催し、総書記などを選出することになっています。ここでは、習近平氏が異例の三期目の国家主席に就任するとみられています。それに先立ち、9日からは、中国共産党の重要会議である第19期中央委員会第7回全体会議(7中全会)が始まっています。習氏が今夏の北戴河会議を何とか乗り切ったようですが、さらにこの7中全会を乗り超えれば、三期目は確実となります。ただ、反習近平派の筆頭である江沢民氏とその系譜がどのようにこれを見ているのかは不明です。
先日、96歳になった江沢民氏の誕生日を祝う写真が2か月遅れで出回りましたが、同氏の健在ぶりと、お祝いの花の贈呈者の「習近平」という文字は切り取られたように映り、NO.2である「李克強」の文字が鮮明であることから、中国ウオッチャーからは様々な憶測が流れています。さて、ここでは、中国共産党の全国代表大会で、習氏がどのような地位につくのか、また何を言い出すのかを見て、今後の中国の動向を予測することができると思いますので、事前にいろいろ押さえておくべき事柄について考えたいと思います。まずは、党の主席になれるのかという問題についてですが、習近平氏のいまの立場は国家主席で共産党の総書記です。これが最高位のように見えますが、一番偉い立場なのが「中国共産党主席」にあたります。中国は、共産党が国家や政府を指導する立場で、ナチス・ドイツやソ連も同じです。党主席になったのは毛沢東、華国鋒、胡耀邦(のちに総書記に格下げ)の三人だけで、そのうち終身だったのは毛沢東だけです。いま、習氏は、党主席と終身の地位を狙っているわけです。
もし、それが終身は別として、党主席という立場になったら、「世界級領袖」という習氏を讃える言葉が出てくると思います。今でも領袖という言葉が使われており、たまに世界級領袖と言われることもあるようですが、党主席になれば確実でしょう。世界級領袖と呼ばれ出したら、中国は最高指導部7名の合議から習氏の独裁に移行したということになります。かつて毛沢東の独裁の時に文化大革命でひどい目に遭った鄧小平氏は、党主席という地位をつくらないように不文律で定めていたのですが、反鄧小平でもある習氏はこの方針には従いたくないようです。これまで、集団指導体制で個人が決めるわけではなかったシステムが崩壊しますと習氏の好き勝手ができるようになり、戦争もやりやすくなります。しかし、権力の個人への集中は、周囲の反発も強くなり、最後は中国が崩壊していく原因となるのは確実です。
他方で、最近の習近平氏は3期目に向けた新方針というのを出しており、内政と外交でそれぞれ一つずつキーワードがあります。外交では「人類運命共同体」と言っています。一見良い言葉のようにみえますが、実際は、「人類運命共同体である。しかし、その人類運命共同体を指導するのは俺だ」という意味なのです。これを言い換えると、「習独裁体制で世界に覇権を広げ、世界の人びとを支配していく」との宣言を意味しています。2番目のキーワードは、内政で、共同富裕社会という言葉を使うかどうかです。これは鄧小平以来やってきた「開放改革路線はとりませんよ」、「鎖国経済にして再社会主義化をやりますよ」という意味でとらえることが大切です。したがって、「共同富裕」は「再社会主義化」、「鎖国化」という意味で理解しておくことが重要です。
ここまで書くと、早く習近平体制が終わってほしいと思うかもしれません。しかし、世界覇権を唱える習氏だからこそ日米同盟、QUADなどの中国包囲網が万全になっているわけで、江沢民氏の系統が実権を握れば、今の民主党政権下のアメリカはバイデン氏を筆頭に中国とよりをもどし、日米関係は疎かになることは間違いありません。どこまでの権力基盤が確立されるのか、日本としては中国共産党大会後の動向に注目する必要があるでしょう。
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