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2007-10-29 00:00
警鐘が鳴っている――世界経済の不安な動き
角田勝彦
団体役員・元大使
10月に、今後の世界経済の動きを見る上で重要な二つの会議があった。すなわち先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)と中国共産党第17回党大会である。なお19日は、1987年のブラックマンデーから20年目に当たる。周知の通り、信用力の低い低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題に端を発した米住宅市場の不振と金融・株式市場の混乱は、原油価格の高騰もあいまって世界経済を減速させている。G7は、「世界経済は過去30年以上の間で最も力強く持続的拡大をしている」と指摘した前回4月の会合と異なり、景気認識を大きく下方修正した。10月のIMF世界経済見通しも2008年米成長率を0.9ポイント下方修正し1.9%とした。
米政府も「米経済にとって現在最も深刻なリスク」と認める住宅金融市場については、FRBの金融緩和政策や米大手3行のサブプライム対策基金設立を含み、さまざまな対策が講じられているが、G7が有効な対策を打ち出せなかったこともあり、市場の不信感と危機感は強いものがある。さらに各国の対策としての大量の資金供給や金融緩和策のため溢れ出た資金は原油市場に向かい価格高騰を招いている。中東産油国や中国などの外貨準備を元手とする政府系ファンド、ヘッジファンドも金融市場の撹乱要因になっている。
それでも、IMFは、2008年世界成長率は4.8%と高く見ているが、これは新興市場国、とくに中国経済が好調を維持するためである。中国は引き続き二桁の成長を行い、米国を抜いて購買力平価ベースでも初めて世界経済成長に最大の寄与国となるとの予測である。ところが、中国経済にもはっきりと問題が見えてきている。IMFも中国の所得格差が急速に拡大している(ジニ係数1981年の0.28から2004年の0.42)との分析を発表しているが、第17回党大会は、民生を重視して持続可能な経済発展を目指す「科学的発展観」を明記した改正党規約を採択した。
現在中国経済は過熱状態にある。実体もそうであるが、株式市場はバブルを通り越している。「収益の裏づけがない端株まで買われる」三文バクチ状態にある。中国指導部が現在恐れている最悪のシナリオは、株式市場が来夏の北京五輪前に暴落し、庶民の不満が政権に向かうことだといわれる。不動産価格も高騰を続け、物価上昇が目立ち始めた。インフレ加速の危険がある。政治面はさておき、先進国経済が揺らいでいる現在、中国の経済混乱は、密接な関係にある日本を含む世界経済に重要な影響を及ぼすことになる。自由化への遅れからか、日本はサブプライムローン問題の影響はあまり受けなかった。成長優先論にだけ耳を傾けることなく、少なくともここ暫くは、周りをよく見て経済運営に当たるべきだろう。
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