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2022-11-07 00:00
東京に核シェルターはあるか
松井 啓
初代駐カザフスタン大使
私がカザフスタンに初代大使として赴任した1993年当時は首都アルマータ(当時)の集合住宅には地下シェルター施設が付属していた(多くは駐車場などに転用されていた)。ウクライナのチェルノビル原発での事故の被爆者がアルマータに移送されて来て治療を受けていた。ウクライナもカザフスタンも核保有国であったが、両国とも放棄した。今次ロシア軍のウクライナ侵攻では集団住宅や原子力発電所の地下シェルターが活用されている。
新聞記事によれば、ロシアのウクライナ侵攻に触発され、我が政府は台湾有事を想定して沖縄県先島諸島にシェルター(緊急一時避難施設)の設置を検討するようであるが、最近の北朝鮮のキム総書記のミサイル乱発射を見ていると、長距離ミサイルの重要性を肝に命じ、自己政権の維持に不可欠と確信しているようであり、好機とみれば朝鮮戦争勃発時のように、突然に南に侵攻することもあり得よう。
東京都の千代田区に一発ミサイルを撃ち込めば、国会議事堂、中央政府官庁街、最高裁判所、大手町商社等の本店、皇居が壊滅状態となり、日本全体が脳性麻痺のような状態になる恐れがある。アメリカ連邦議会の地下には避難施設がると仄聞している。東京では地下鉄の大江戸線などの一部が避難場所や必要物資の貯蓄場所に想定されているとのことだが、都心の高層マンションやオフィスやホテルに対して如何なる施設を義務付けるかなど調査する必要があろう。更に、現在稼働、非稼働を含め54基ある原発が攻撃対象となれば周辺住民が放射能汚染にさらされることは、東日本大震災の時、またチェルノビルの原発事故、更に現在進行中のウクライナ戦争を見れば明白である。
今回の北朝鮮のミサイル発射後にJアラートが度々出されたが、一般市民は「何をどうやって注意すればよいのか」の具体的な行動規範がなくうろたえた。更に、度々出された間延びしたアラートでは緊張感が薄れ「オオカミ少年の警告」となってしまうので早急に改善の必要がある。更に実際の避難には省庁間の連携、地方自治体間の連絡、民間防衛の一環としての訓練、消防団や自衛隊との連携をいかにするか具体的に検討しておく必要がある。因みに、諸外国のシェルター施設の人口カバー率(%)は、新聞記事等によれば(信頼性は未確認)、スイス90~100、イスラエル70~90、ノルウェー98、スウェーデン80、フィンランド70、シンガポール54であるのに対して、日本は0.02である。外国の実体調査から始め、設置には長期間膨大な費用がかかるだろうから、即刻検討を開始しなければ「後の祭り」となる可能性がある。
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