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2022-11-08 00:00
この国の政治が罰せられた恥ずべき判決
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「性暴力被害を訴えるジャーナリストの伊藤詩織さんが、自身を中傷するツイッター投稿への『いいね』の違法性を問い、自民党の杉田水脈衆院議員を提訴した裁判の控訴審判決。東京高裁は10月20日、1審の東京地裁判決(3月)から一転、杉田議員の『不法行為』を認めた」(2022/10/23毎日新聞)。
この裁判、初審東京地裁の1審判決は、一般的にソーシャルメディアにおける「いいね」は「対象への好意的な感情を示すシンボルとして受け止められている」とした上で、「称賛などの強い感情から、悪くないなどの弱い感情まで幅広く含んでいる」と指摘し、「『いいね』自体からは感情の対象や程度を特定することができず、非常に抽象的・多義的な表現行為にとどまる」として「原則違法とはいえない」との見解を導いた。これはいかにも優等生裁判官の言いそうな、あまりに読みの浅い認識であった。
たしかにSocialメディアの投稿に対する読者の評価は多くの場合「賛意」「同調」「評価」を示すタグしか示されていない。しかし、これが、投稿本文が悪意に満ちた内容である場合においては「いいね」は同意や賛意を表しているのであって、その「意図」の強弱は原投稿のそれや「企図」の強弱に同期する。
杉田議員がネットを丹念にbrowsingしながら、伊藤詩織さんの誹謗や中傷を書いた投稿を探してまで「いいね」を出し続けたのは、故安倍晋三元首相と入魂のジャーナリストで、彼による性暴力被害を伊藤さんが民事訴訟に訴えたことに対して、これを揶揄する一方側に対してのみ「いいね」を発したものであることである。
これは、裁判の公正性、中立性、静謐性の観点からも、また個人の人格・プライバシー保護の観点からも一連の投稿者すべてにわたって言ってはならない発言だったのだが、これに対して一方的にタメにする見解に対してエンカレッジするべく「いいね!」を無数に押し続ける行為。およそ近代国家の政治家、あろうことか今や総務大臣政務官という政府の重要ポストにある者のやるべき行為では断じてなかろう。
こういう人物が政界やネット内をブラブラしていることの方が、国家国民にとってはるかに深刻な問題である。この国の政治が罰せられた恥ずべき判決であった。
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