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2022-11-25 00:00
大国のはざまで生きる小国は肩入れをしてはいけない
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
国際政治の構造は諸大国の合従連衡や栄枯盛衰で動いてきた。大国の動きは小国の動きに影響を与える。特に周辺に存在する小国群は大国の動きに翻弄されてきた。国際政治を分析・研究する国際関係論(International Relations)という学問の発展はヨーロッパ諸大国の動きの研究から始まった。また、古代中国の春秋戦国時代、秦の中華統一までの動きも国際関係論の諸理論で説明できるというところから、「既に国際関係論の学問の原型は中国にあった」ということも言える。漫画やアニメで大人気の『キングダム』や、私が学生時代に流行った『銀河英雄伝説』は国際関係論の勉強になる内容だと考える。
話がだいぶ逸れたが、ロシアがウクライナにかかりきりになると、
ロシアの影響下に遭った国々への掌握力が弱くなり、自国の判断、利益を優先しての行動が取れるようになるということになる。ヨーロッパの地図は多くの日本人はある程度きちんと把握していると思うが、中央ヨーロッパ、東ヨーロッパ、バルカン半島付近などは怪しい人も多いと思う。地図を貼り付けるので、地図を参照しながら以下の記事をお読みいただきたい。
ヨーロッパは西側諸国の大国である「イギリス・フランス・ドイツ対ロシア」という構造になっているが、この2つの柱の間、周辺にある小国群は動向を見極めながら行動する。ロシアの影響力が強い時には、西側諸国に秋波を送ることが憚られるが、ロシアの軛が弱くなれば自由に動き回ることになる。しかし、俗に「両天秤にかける」という言葉がある。拮抗する2つの勢力の間をうまく立ち回ろうと思えば、どちらか一方に賭けるのではなく、2つの間をうまく泳ぎ回ることが肝心だ。それは大変難しいことだが、両方から援助を引き出すということができる。どちらか一方が弱くなると、そのようなことができなくなる。
ある国が大国と勃興していく過程で、周辺諸国はどのように対応するか、ということについては、国際関係論のリアリズムには「バランシング(balancing)」と「バンドワゴニング(bandwagoning)」という概念がある。「バランシング」はその勃興大国に対抗するために、弱い国々が同盟して対抗するという考え方で、「勢力均衡」という言葉になる。「バンドワゴニング」は勃興大国の側について利益を得るということで、「勝ち馬に乗る」という言葉がぴったりとくる。
東ヨーロッパや中央ヨーロッパの国々はEUやNATOに参加することで、ロシアに対して勢力均衡を図ってきた。ロシア側か見れば、NATO拡大は国家安全保障上の問題であり、国境を接することは恐怖ということになる。中国の言葉に「唇亡びて歯寒し(唇亡歯寒)」というものがあるが、冷戦時代の東ヨーロッパと中央ヨーロッパは、ソヴィエト連邦の「衛星国」であり、言ってみれば「唇」だった。ロシアは「唇」をなくしてしまった状態である。それで、周辺に緩衝地帯を作りたいということになる。親露勢力を拡大したいということになる。もしくは、西側との間に中立国を挟みたいということになる。
周辺諸国は「どちらか一方に肩入れすることなく、中立である」ということが重要だ。これは日本にも当てはまる。日本はアメリカと中国の間に位置する。アメリカの同盟国(実際は従属国)であるが、アメリカに一方的に肩入れするのは危険である。特に時代が大きく転換しようとする時期において、選択肢を狭める行動は自分の首を絞めることになる。
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