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2022-11-29 00:00
「産業の米」半導体の国産を目指す習近平政権下の中国と毛沢東が主導した大躍進
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
21世紀に入り、2030年頃に中国は経済成長を続け、アメリカを逆転するという予測がなされるようになった。1820年当時、当時の清朝が支配した中国は世界のGDPの3分の1を占める世界最大の経済大国であった。現在は16%ほどを占め、25%ほどを占めるアメリカを追いかけている。中国の経済成長率がアメリカの経済成長率を上回り続ければ、GDPで中国がアメリカに追いつき、追い越すということになる。
日本は経済成長がない状態が約30年間も続き、1968年に当時の西ドイツを抜いて世界第2位の経済大国になったものが、2011年に中国に追い抜かれて、42年ぶりに世界第3位に後退した。世界第3位でもたいしたものではあるが、世界のGDPに占める割合は5%ほどであり、アメリカと中国に置いて行かれている現状だ。ここから奇跡の経済成長を起こして上位2カ国に追いつくということは絶望的だ。日本は衰退国家である、ということを前提にして議論を行うことが建設的であると思う。
中国の近現代史、特に1949年の中華人民共和国成立後の大きな流れとしては、大躍進運動(Great Leap Forward、1958-1962年)とプロレタリア文化大革命(Great Proletarian Cultural Revolution、1966-1976年)である。中国建国から1978年からの鄧小平が主導する改革開放(reform and opening-up)までの約30年のうち、半分以上の期間は動乱状況にあったが、それを起こしたのが建国の父である毛沢東であったことは皮肉なことであった。
大躍進運動は、第二次五か年計画(five-year plan)の中での農産物の大増産と鉄鋼の生産量の急激な拡大を目指し、無残に失敗した。ソヴィエト連邦に依存せずに、急激な経済成長でイギリスを抜いてやろうという野心的な政策であったが、無残な失敗に終わった。鉄鋼生産に関しては、農村に粘土で釜を築いて鉄を溶かして鋼鉄を造るという「土法高炉」が用いられた。しかし、これでは実際には粗悪な鉄しか製造できなかった。農民たちはこの作業に熱狂して、自分たちの鍋や鎌を溶かして「鋼鉄」を製造した。
中国は半導体製造で「大躍進運動」に比する動きをしていると、2022年10月14日付の『フォーリン・ポリシー』誌でクリストファー・マーキス氏は述べている(https://foreignpolicy.com/2022/10/14/xi-mao-campaigns-chips-industry/)。半導体の国産化を目指すあまりに無理をして失敗するだろうというのが結論だ。半導体製造の国産化はしかしながら重要な政策である。ウクライナ戦争勃発後、半導体不足が世界規模で発生し、日本国内ではエアコン、冷蔵庫や洗濯機など半導体を使用する家電の品不足が続いたことは記憶に新しい。半導体は現代世界においては産業の米である。半導体がなければ生活が立ち行かないということになる。更に言えば、高度な武器にも使われることを考えると、安定供給は国家安全保障にとっても重要である。世界の現状は不安定化しており、第三次世界大戦の可能性が高まっている。
中国はこれまでの歴史の失敗を教訓にして、半導体の確保を進めるだろう。それは経済問題というよりも国家安全保障上の政治問題ということになる。
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