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2022-12-01 00:00
どうするのか、物価高:岸田首相は正念場
舛添 要一
国際政治学者
秋の訪れとともに、物価高騰の波が押し寄せている。食料品、ガソリン、光熱費など、日々の生活に不可欠な物やサービスの価格が上昇すれば、生活が立ちゆかなくなるのは当然である。国民の最大の不満は、そこにある。事情は海外でも同じで、11月8日に投票が行われたアメリカの中間選挙での最大の争点はインフレだった。消費者物価指数は8.3%(8月)、8.2%(9月)と、高水準である。イギリスで、首相就任後45日にしてトラスが辞意を表明し、スナクが後継首相になったが、その背景にはやはり10%を超えるというインフレがある。
日本の直近(10月)の消費者物価指数を見ると、総合指数で3.7 %の上昇、生鮮食料品を除く総合指数で3.6%の上昇、生鮮食料品及びエネルギーを除く総合指数で2.5%の上昇である。物価高の要因は、ウクライナ戦争と円安である。上記の数字を見れば、エネルギー価格の上昇が物価を引き上げる最大の要因であることがわかる。石油、天然ガスなどのエネルギー供給がウクライナ戦争で減少した上に、円安である。輸入品の価格は軒並み上がらざるをえない。ウクライナ戦争については、日本には停戦を実現させる軍事力も外交力もない。また、円安については、公定歩合の決定は日本銀行の専権事項であり、金融緩和路線を継続する黒田総裁に政策変更を迫ることができない。その意味で、この物価高は岸田政権の責任ではない面が多い。しかし、政治の世界は結果責任であり、岸田首相への不満は高まっていく。したがって、内閣支持率も低い。
「新しい資本主義」というスローガンも何の効果もないまま、すでに色褪せてしまった。1960年に当時の池田勇人首相が打ち出した「所得倍増論」とは雲泥の差である。10年間で国民所得を倍増させるというプランは分かりやすく、具体性があったのみならず、岸信介内閣の安保騒動で過剰に政治化した世論を沈静化させ、国民の意識を経済発展へと転換させる知恵が含まれていた。実際に、10年間で所得は2.3倍に拡大したのである。ところが、「新しい資本主義」は抽象的すぎて、所得倍増論のような具体性がない。円安で苦しむ国民にしてみれば、円安の元凶である金融緩和策を主軸とするアベノミクスを大きく転換させる経済政策に期待したいところである。しかし、スローガンのみが空虚にこだまして、何の成果ももたらしていない。
物価高の原因となっている異常な円安に対する岸田政権の無策に、国民は怒っているのである。1ヶ月に大臣が3人も辞任するという異常事態だ。物価対策に失敗すると、岸田首相に残された道は退陣しかなくなる。
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