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2022-12-12 00:00
日本遺産の効用
船田 元
衆議院議員
2015年にスタートした日本遺産の制度だが、現在では全国107ヶ所が登録されている。各県平均2カ所程度となっている。当初は世界遺産に登録出来なかったり、暫定リストに据え置かれたりしたままの案件を救済する意味合いもあったが、世界遺産とは別の意味合いで動き出した側面もある。
日本遺産の特徴はストーリー性を重視した点である。ただ単に観光地に行って「素晴らしい!」とか「綺麗だ!」で終わりではなく、その遺産がどういう背景で生まれたか、地域の人々にどのような影響を与えてきたか、人々の生活の中にどう生かされてきたか、どうやって遺産が支えられているかなど、地域や人々とのつながりを重視する観点によって選ばれている。
日本遺産を訪れる人も1カ所に寄ったら「さよなら」ではなく、関連するスポットを回遊したり、ものづくりや踊りを体験したり、その歴史や背景を調べたりするという、体験型や学習の要素も加味されるものが多い。
私の地元の宇都宮市では数年前に、「大谷石文化が息づくまち」というテーマで、大谷石の採掘跡地と建造群がその指定を受けた。大谷石切りの現場やその跡地を巡り、採掘の苦労を知る。切り出された大谷石がどのように建材として利用されているか、実際に石蔵や教会を見学する。大谷石はとても柔らかくて加工しやすいので、刻んで灯籠などを作る体験をする。さらにはフランク・ロイド・ライトが作った帝国ホテルなどの建造物が、その後どうなっているかなど調べ学習まで広がる。
日本遺産はこれまでの観光行政の範囲を超えて、新たな展開さらには観光資源の再発見・発掘、地域振興など、一石二鳥、三鳥の優れた制度である。ストーリー性に乏しく、従来の観光地の延長のようなものは指定しない、という原則を守る文化庁の姿勢は素晴らしい。日本遺産の運用によっては、新たな要素も加わる可能性大である。今後も日本遺産を育てていきたい。
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