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2023-01-12 00:00
防衛費倍増の危うさ
船田 元
衆議院議員
私は臨時国会終盤前後は、統一教会被害防止法案の成立にかまけており、我が国の防衛費大幅増問題において、党内で意見を述べる機会を失ってしまった。正直、遅きに失してしまったが、見過ごすことができない問題なので、敢えて批判を恐れず意見を述べたい。
我が国の防衛費の総額は1976年の三木内閣以来、GDPの1%に抑えられていた。1987年の中曽根内閣ではこの枠の撤廃を決めたが、1%を超えることはほとんどなく、超えたのはこれまでにわずか3回のみだった。
しかし最近は中国が海洋進出を進めるなど、地域の覇権を目指す挑戦的な動きを顕在化し、北朝鮮は今年に入ってから狂ったようにミサイルを撃ち続けている。ロシアのウクライナ侵略も決して対岸の火事ではない。安全保障上の懸念が一気に高まっていると言える。
一方で長年にわたって、防衛費がGDPの1%を超えられなかったために、弾薬をはじめ防衛装備品が慢性的に不足し、防衛施設の老朽化も酷い状況である。したがってこの度の1%枠を外れて防衛費を増加させることは、むしろ当然のことであり歓迎すべきことである。
しかし増加に向けての議論や手法は、杜撰であると言っても過言ではない。今後5年間で43兆円、5年後の2027年度で9.8兆円という数字が突然示された。現在の概ね2倍にも達する。岸田総理はこれまで精緻な議論をしてきたというが、我々にも国民にもほとんど知らされてこなかった。
なぜそのような金額が必要なのか、今後の安全保障上の危機にどこまで自衛隊は活動するのか、そのためにはどのような装備品が必要なのか。そのような緻密な議論の積み上げがなく、数字が一人歩きしている。元自衛艦隊司令官の香田洋二さんは「今回の計画からは、自衛隊の現場の匂いがしません」と指摘している。
確かにNATO諸国の多くはGDPの2%を防衛費に充てており、だから日本も2%は当然だと言われるが、彼らが2%になるまでには相当な時間と積み上げの議論をしてきたのである。決して短時日にできるものではない。
5年後の防衛費の到達目標は変更できないのであれば、せめてなぜその金額が必要なのか、国民に分かる形で丁寧に示すべきではないだろうか。またそのことが今後の国民負担への理解を深めることにつながるはずだ。
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