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2023-02-17 00:00
「同工異曲」のLGBT発言
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「岸田文雄首相は1日の衆院予算委で、同性婚の法制化に関し『極めて慎重に検討すべき課題』だと述べ、否定的な考えを改めて示した。同性カップルに結婚の自由を認めようとしない理由について『家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ』と強調した」(「首相、同性婚に否定的な考え 『社会が変わってしまう』」2023/02/04東京新聞)
岸田首相は、この記事に見るように、男性同士や女性同士の結婚というような世間でLGBTと言われる性向の人々の嗜好や行動については歓迎しないor賛同しないor嫌い・・と考えているように聞こえる。
他方、LGBTに関する感想を述べた首相官邸幹部の発言に関する「騒動」。こちらは世間に大変な反応を呼び起こしてしまったようである。「経済産業省出身の荒井勝喜首相秘書官(55)は3日夜、性的少数者(LGBTなど)や同性婚に関し、『見るのも嫌だ。隣に住んでいたらやっぱり嫌だ』と記者団に語った。発言はオフレコが前提で、その後に陳謝、撤回したが、岸田文雄首相は4日、荒井氏を更迭する考えを示した。首相秘書官の差別的な発言は政権に打撃を与えそうだ」(2023/02/04「荒井秘書官、LGBTは「嫌」 岸田首相「言語道断」、更迭へ―政権打撃」時事通信)
「直接話法」で書かれた字面の発言そのものは違うには相違ないが、主張とするところは両人とも同じこと、あるいは同種の「嗜好」を持っていることが見て取れる。こういうのを「同工異曲(見かけ・外観が違うようでも内容は似たり寄ったりであること。)」という。にもかかわらず、前者の首相が、後者の秘書官を更迭するという憂き目を与える。この場合、果たして首相は「更迭する」資格を持てるのであろうか?
さて、この問題、どこに混乱のタネが有るのか?言うまでもなくこれは性自認の違いのきわめて個人的な問題である。太古の昔における「ハードウェア」としての性分化と「ソフトウェア」としての心の意味理解の本質的な違いの問題のである。それゆえ個人の性自認について他人の容喙すべきコトではない。それなのに長い歴史の期間中、性同一性としては「ハードウェア」を強制してきたことで「ソフトウェア」を隠蔽し強制隔離してきたものである。
こういう根本的・本質的に個人的な問題に他者が、ましてや政治が容喙することはあってはならないこと。まして政治が極度の個人的な思考について口を出すことは、人権問題よりもっと手前の生物進化に対する「無意味な否定」ではないかとすら思うのだが。
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