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2023-03-02 00:00
ウクライナ問題は国際的枠組みで解決を!
松井 啓
初代駐カザフスタン大使
ロシアは2008年ジョージアから南オセチアとアブハジアの2地方を独立国として承認し、2014年にはウクライナからクリミア半島を独立させ、更に2022年2月にはウクライナ東部のドネツク及びルガンスク両地方を人民共和国として承認したうえで、ウクライナに対して軍事侵攻を開始した。長引いているこの戦争は単にウクライナとロシア間の戦争ではなく、国際社会全体に悪影響を及ぼしている。
欧米はロシアに対して経済制裁、金融制裁、貿易制限等を課しているため、エネルギー資源(石油及びガス)、食料、飼料(小麦、トウモロコシ等)のサプライチェーンの破損によりヨーロッパ等の先進国だけではなく、中東、アフリカ、アジアの新興・途上諸国(グローバルサウス)の経済成長を阻害し政権を不安定化させている。国連でロシア非難決議に対して賛成国が140前後にとどまり、棄権に回っている国が35前後ある。
この侵攻はロシアとウクライナの宗教、民族アイデンティティや歴史認識の食い違いに起因するもの以上に、プーチン大統領のロシア大帝国の復活(ロシアの夢)に対する強い思い入れであり、その一環としてウクライナの属国化を目指しているものである。
若い兵士達や無辜の幼児や母親の生命の犠牲を一刻も早く止めるためにウクライナに領土割譲を説得して和平に持ち込むべしとの主張は絶対に受け入れてはならない。プーチン大統領の支持率80%前後(強権下の世論操作の可能性あり)に比し、ゼレンスキー大統領の支持率が90%に達していることをみれば、国際法に背いてロシアに侵犯された領土の一体性と独立主権国家維持に対するウクライナ人の決意を強く支持すべきである。
この問題解決には関係諸国が過不足なく参加する国際的枠組みによる合意が必要であり、さもなくば長続きはしないであろう。参加国は次のa~fの12カ国に絞られよう。
a. 直接の当事国: ウクライナ、ロシア。
b. 近接国: ベラルーシ、ポーランド。トルコ(仲介試み、石油や穀物輸出の黒海に対する発言権大)。
c. 米、仏、独、英: EU及びNATO関係国、武器供与等によるウクライナ支援。
d. 日本: G7議長国、国連安保理非常任理事国。
e. インド: G20議長国、グローバルサウスの代弁者を自任、国際会議では中立を標榜。
f. 中国: 上記以外の国連安保理常任理事国、ロシア寄り、 2月24日独自仲裁案を発表。
来年には3月にロシアの大統領選挙、5月にウクライナの大統領選挙、11月にはアメリカの大統領選挙が予定されており、それぞれの国内政局も複雑に絡んでくるだろうから、機会を逃さない対応と国際会議の場所(NYの国連本部?)及び議長の選出は微妙な調整が必要になってこよう。
2023年は日本変革の節目の年である。重要国際会議で日本のプレゼンスを示す千載一遇の機会を国会開会中を理由に放棄するのは議長国に失礼であり、外務、防衛、財務担当の閣僚が欠席するのは国際感覚の欠如であり奇異ですらある。G7国のトップでウクライナを訪問していないのは議長国である日本のみである。岸田首相には5月の広島サミットまでには是非とも訪問を実現させて頂きたい。(以上)
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