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2023-05-23 00:00
AIと付き合うにはAI以上の知性が必須
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「(Chat GPTに)『AIで世論操作は可能ですか?』と尋ねると、『はい、可能です』と即答してきた。『しかし、それは不正確であったり、倫理的に問題がある場合があります。AIの使用には慎重な検討が必要であり、適切な監視と規制が必要です』とも答えた。問われているのはむしろ人間の方かも知れない」(2023/03/14東京新聞記事から)。これは、「人工知能(AI)を使って世論操作をするようなことが可能でしょうか?」と尋ねられたのに対する(ChatGPT)の回答だ。このAIの優等生的返答のすばらしさ。まるで、Chat GPTには知性が十分に備わっているようにさえ感じられる。本人(Chat GPT)が言うように「慎重な検討」が必要だが、何を「検討」すればよいのかまでは答えていない。
広島市で開かれる先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)では、戦争と平和,世界経済,グローバルサウス問題、コロナ後の世界、等々、喫緊の合意が必要な重要課題山積の中にあって、「生成AI(人工知能)の統一ルールづくりをどうするか?」という、いささかこの合議体に相応しからざる異質の議題が、日本政府の強い意向でアジェンダの中に入っている。なぜかこの問題に前のめりになっている西村康稔経産大臣など岸田内閣の閣僚たち、その本心は那辺にあるのか?もってさっぱりわからないのだが・・・。人がモノを尋ねる時には、尋ねる相手から得られる回答のおおよそのレベルを事前に想定してかかるものだ。子供に尋ねるなら、彼の少ない経験の範囲内にある問題を作って尋ねるし、目上の経験者であればある程度の深い回答を期待する。期待しつつも、その答えの中に意想外や不信感があればそれを差し引いたり無視したりなど、取捨選択しながら聞くだろう。いずれも尋ねる相手の知識の度量を推し量りつつ対話の中で加減算しながら正解らしい付近に着地点を見出していくことになる。
ところが人工知能のように知性と教養について推し量れない相手に対して「道」を尋ねるとなればその回答の真偽・正邪・適不適を推し量る手持ちの術は何もない。ましてかれを人工知能として神に準じる存在と認知してしまうと善悪を判断する術はなくなる。この問題に触れて、日本政府のAI戦略会議座長の松尾豊・東大教授が新聞記者の質問に対して次のような回答しているのが面白い。いわく、「AIに、法律や医療などの分野で精度の高いデータを大量に学習させることで、それぞれの分野に特化した『チャットGPT』を作ることが可能です。専門家と同じ、あるいはそれ以上の能力を発揮します。チャットGPTの開発元のオープンAIと米ペンシルベニア大の研究では、高収入で参入障壁の高い職業ほど影響が大きいと指摘しています」(2023/05/16毎日新聞)。
左様、高度な専門知識を要する仕事において有益だというとき、これを操るには人工知能に勝る本人知能がある人にとって役立つのであって、それに及ばない知能にとっては暗闇で振り回す白刃のごとき危険物にほかならないものとなる。ブームのAIは、AI以上の知能を有する者にとって有益で、AI以下の知性の者がこれを使うと闇夜で振り回す邪剣になる、と知るべきである。AIを政治家には使わせたくない。
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