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2023-06-29 00:00
アウンサンスーチー氏の子息の新聞記事から考える
伊藤 洋
山梨大学名誉教授
「ミャンマーで拘束が続く民主化指導者アウンサンスーチー氏の78歳の誕生日を前に、次男で英国在住のキム・エアリスさんが17日、独立系メディアを通じてビデオメッセージを公表した」(2023年06月19東京新聞)この記事によれば、エアリスさんは幼少期に日本やインドで暮らしたことがあるそうだが、記事の末尾には「民主主義国である日本とインドが国軍を支援しているのは『残念だ』と名指しで批判した」(同上)とある。
ここでいう「支援」とは、クーデター以後の具体的に何を意味しているのか筆者には分からないが、日本政府が国軍について厳重な抗議をしたなどということは聴いていない。良くて精いっぱい「触らぬ神に祟り無し」という態度以上でも以下でもないのであろう。そして、それは日本にある種の強いシンパシーを持っていたであろうアウンサン将軍の孫エアリスさんにとって大いに不満であろうと同情する。
あの15年戦争の時代、ミャンマー(当時はビルマと呼んだ)は英国とその軍によって支配されていて、国内の若者たちの一部はその英国を国内から排除しようとゲリラ戦を仕掛けていた。その若者たちを日本陸軍は支援し、日本に連れてきて基礎から戦闘教育を施した。そのビルマ青年隊の頭目こそ、このエアリスさんの祖父で母スーチーさんの父であるアウンサン将軍であった。アウンサンらは、自身を教育し支援してくれた日本の邪心も見抜いていたから、英国に替わって日本軍が権勢を振うようになると反日運動を展開するようになっていったのだが、総じて敗戦後のビルマと日本の関係は、「ビルマの竪琴」が描いた心の交流も残存したのである。
以上は、風に揺れる葦の如き「日・緬」関係の歴史だが、常に正義より欲得だけで見下した態度を取ってきた日本のアジア外交のこと、アウンサン将軍の孫が「日本とインドが国軍を支援しているのは『残念だ』と名指しで批判した」という上の新聞記事を、筆者は「ムベなるかな!」と思いつつ悲しく読んだのである。
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