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2023-07-12 00:00
トランプ前大統領を巡る魔女狩り裁判
村上 裕康
ITコンサルタント
トランプは2016年の大統領選挙でヒラリー・クリントンを退けて、大統領に就任した。トランプは、米国のグローバル化の恩恵から取り残された非エリート層を支持基盤とし、政治思想的には旧保守主義である。「MAGA(Make America Great Again)」を唱え、米国の伝統的価値に訴える。一方ヒラリーは、米国の東部エスタブリッシュメントのエリート層あるいは社会保障を必要とする貧困層を支持基盤とし、政治思想的にはリベラル・デモクラシーの流れを汲む。米国の言論界、ハリウッド、企業のCEO、大学教授、IT、金融など、エリート層がリベラルになびく中で、トランプがヒラリーを退けて大統領に選ばれたのは、予想外の出来事であった。トランプは、「物言わぬ中間層」の支持を受けて大統領に選ばれたのである。「トランプの独特で型破りなスタイル」、「ツイッター投稿で直接自らの政策を発信するスタイル」、「歯に衣着せない物言いでメディアを煙にまく攻撃性」は人々の反感を買った。トランプは主流メディアから叩かれ、政治的競合である民主党から叩かれた。叩かれるだけでなく、「この規格外の男を政治の舞台から引きずり降ろさなければ、我々の秩序が壊される」と恐れられたのである。ジョージ W・ブッシュのグローバリストの秩序、バラク・オバマのリベラル・デモクラシーの秩序、これらの秩序の中で幅をきかす、官僚機構あるいはマスコミ達の居場所が脅かされるとトランプは恐れられたのである。オバマは、2008年~2016年の2期にわたって政権を担い、ダイバーシティや多文化主義を唱えてリベラル・デモクラシーを根付かせた。また、アイデンティティ・ポリティックスを実践して、「伝統的に白人優位のアメリカ」を変革した。オバマの民主党は、ヒラリー、バイデンに引き継がれ、オバマのレガシーをかけてトランプと闘っている。トランプは、2016年の大統領選挙で勝利するが、民主党はマスコミを味方につけて、トランプ降ろしを激化させた。ロシア疑惑、ウクライナ疑惑と嫌疑をかけて、トランプを弾劾裁判にまで追い詰めた。2020年の大統領選挙では、オバマ政権の副大統領であったバイデンが勝利した。バイデン政権はオバマ時代の高官を引き継ぎ、オバマの政策を復活させた。バイデン政権は、第3期のオバマ政権とも揶揄されている。トランプは、「ワシントンの沼地の水を抜く(drain the swamp)」といって、「ワシントンの沼地に生息する政界や官僚の大掃除をする」と既存の秩序と闘う姿勢を鮮明にした。トランプは、2021年1月6日、副大統領が選挙の最終集計を公認する日に、トランプは数万人の支持者を議会近くのエリプス広場に集めて「盗まれた選挙」を訴えて抗議するが、支持者の一部が暴徒となって議会を襲撃した。1月6日の議会襲撃事件である。議会襲撃事件の責任を問われ、トランプは弾劾訴追されるが弾劾裁判では無罪になった。しかし、司法省による事件の捜査は続き、トランプの2024年の大統領選挙に影を落としている。トランプは、大統領に在任中、ロシアゲート事件、ウクライナ疑惑、議会襲撃事件と嫌疑をかけられた。このうち2つの事件で弾劾裁判にかけられたが、いずれも、切り抜けている。米国の歴史で、2回も弾劾裁判に掛けられた大統領はいない。トランプにかけられた嫌疑は、細かいものから大きいものまで無数にあるが、先に紹介したロシアゲート事件、ウクライナ疑惑、議会襲撃事件の3つについて、どのような疑惑なのか、疑惑の解明はどのように進んでいるのか、について紹介する。
【ロシアゲート疑惑】
ロシアゲート疑惑は、2016年の大統領選挙において、ロシアの介入とトランプの共謀があったという疑惑と、捜査に対して司法妨害があったという疑惑から構成される。発端は、選挙キャンペーン期間中のヒラリーの私用メール問題にある。ヒラリーのメール問題と関連して、FBIはDNC(民主党全国委員会)のサーバーがハッキングされたのは、ロシアによるものだと断定するが、この時点でロシアのハッキングとトランプの共謀の間の関連は明らかではなかった。ただ、トランプ陣営がロシアと接触していたという事実があり、ハッキング問題と関連してトランプとロシアの共謀が結びついて、ロシア疑惑になった。ヒラリーは、フュージョンGPS(民主党のコンサルティング会社)にロシア疑惑の調査をさせ、スティール文書を作らせた。スティール文書は、元英国の諜報員スティールがロシアとトランプ陣営の共謀を調査して作成した文書である。ロシアがトランプの不名誉な情報を握っている、またロシアが大統領選でクリントンが負けるように裏工作をしているという内容であった。FBIのコミー長官は、「クロスファイア・ハリケーン」というコードネームで捜査を開始した。2017年3月、コミー長官はロシアとトランプ陣営の共謀の有無を捜査対象としていることを認めた。トランプ大統領は司法当局と対立して、コミー長官を解任した。司法当局は、ロバート・モラー氏を特別検察官に任命して、捜査を継続した。コミー長官を解任したのは、トランプによる捜査の介入があったとして、トランプに「司法妨害」の嫌疑を新たに加えた。モラー特別検察官は2019年3月、報告書を提出して、トランプ陣営とロシアに共謀があったという疑惑を裏付ける証拠はなかったと結論づけた。一方、司法妨害については明確な判断を示していない。モラーレポートはトランプとロシアの共謀を裏付ける証拠はないと結論したが、ロシアゲート問題の捜査の仕方に違法性がなかったのかという疑問が残り、ダーラム特別検査官に捜査がまかされた。023年5月、ダーラムの最終レポートが公表された。ダーラムレポートは、ヒラリーが作らせたスティール文書に証拠としての信ぴょう性が欠けるとした。スティール文書の情報源とされたイゴール・ダンシェンコはFBIに対して虚偽の供述を行った容疑で逮捕、起訴された。スティール文書はダンシェンコの虚偽に基づいて作成されたことから、その信ぴょう性が損なわれた。ダーラムレポートは、FBIがヒラリー側の証言に依存し過ぎて、具体的な証拠を欠いたまま捜査に乗り出したと結論付けた。また、FBIのヒラリーの捜査とトランプの捜査における2重基準を指摘した。トランプに対する捜査が慎重さを欠いているのに比べてヒラリーの私用メール問題あるいはクリントン財団の資金源に対する捜査は、慎重で消極的なものであったと指摘した。レポートは、ヒラリーがサーバーのハッキング問題にトランプとロシアの共謀を結びつけてロシア疑惑に仕立てたとした。ヒラリーの計画は、当時のオバマ大統領とバイデン副大統領と共有したとも述べている。ダーラムレポートをもって、「ロシアゲート」事件の全体像を明らかにした。2016年の大統領選挙において、トランプとロシアの間に共謀はなかったこと、ロシア疑惑がヒラリー陣営の提出した根拠のない証拠に基づいて作られたことを明かした。また、ロシア疑惑の捜査において、FBI捜査の党派性を指摘した。
【ウクライナ疑惑】
トランプ大統領のウクライナ疑惑とは、2019年7月25日にトランプ大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談し、ウクライナに対する軍事支援と引き替えに、ブリスマの汚職捜査とバイデン親子の関わりを捜査するように要求したというものである。電話会談の内容が暴露されたことを受けて、民主党はトランプ大統領の弾劾調査を開始した。2019年12月、民主党はトランプ大統領に対して職権乱用と議会妨害の容疑をかけて、弾劾訴追を可決した。2020年2月5日、上院で弾劾裁判の評決が行われたが、罷免に必要な3分の2以上の賛成票が得られず、トランプ大統領は無罪になった。この事件の背景は、ハンターが2014年~2019年にかけて役員を務めていたウクライナの天然ガス会社のブリスマが、汚職の疑いでウクライナ検察から捜査されていたことがある。ハンターが父親のバイデン副大統領の影響力を利用して、ブリスマの汚職捜査を止めさせるように働きかけ、検察総長ヴィクトル・ショーキンが解任されたといわれていた。実際、バイデンは2015年12月にウクライナを訪問し、2016年3月にショーキンは検事総長を解任されている。そして、ブリスマに対する汚職の捜査は同時期に打ち切られている。その後、ショーキンは自分が解任されたのはバイデン親子の圧力があったからだとして裁判所に訴えている。トランプはゼレンスキーとの電話会談で、捜査の継続を要求した。民主党は、トランプ大統領がウクライナに対する軍事支援と引き換えに、ブリスマの汚職疑惑捜査を継続するように要求したことは職権乱用であるとして、弾劾訴追した。トランプはゼレンスキーとの電話会談の記録を公表した。ウクライナ側に捜査を促す発言はあったが、軍事支援関連と交換でという話はなく、「職権乱用」にはあたらないと主張した。また、ゼレンスキーもトランプからの圧力はなかったとコメントした。民主党はトランプに対して証人喚問や証拠提出を要求したが、トランプが弾劾調査の要求に協力しないと表明したことから、議会妨害にあたるとして弾劾訴追の要件に加えた。この事件は、ニューヨークポスト紙がハンターのラップトップPCの存在をスクープしたことで、新たな展開を迎えた。このスクープは、大統領選挙を2020年11月3日に控えた、10月14日になされ、ラップトップの中にハンターがブリスマ幹部にバイデン副大統領との会談を仲介したことを示唆するメールがあったと報道した。10月19日、ハンターのラップトップはロシアによる偽情報工作であるという書簡を、51人の元情報機関の高官の署名入で発表した。この書簡は、ニューヨークポスト紙の記事の信憑性を損なうもので、ラッパー元国家情報長官やブレナン元CIA長官など、元情報機関の高官の署名入で公表された。ジョーバイデンも大統領選の討論会でラップトップはロシアのプロパガンダであると主張した。FBIはデラウェアのPC修理店からハンターのPCを2019年12月に押収し、ラップトップPCを調査していることを認めた。しかし、その後FBIは、ラップトップの調査結果について、ほとんど何も語っていない。それどころか、FBIはハンターのラップトップに関する情報について、twitter社に対してモデレーションをさせていたことがTwitter Fileから明らかになっている。ハンターのラップトップは本物か、それともロシアによる偽情報なのかという議論は続いたが、2023年4月、元CIA副長官のマイケル・モレルによってなされた爆弾証言は、「ロシアによる偽情報」という書簡は作り物であったことを明らかにした。モレルは下院情報委員会の非公開の宣誓証言で、「ブリンケン外交政策顧問(現国務長官)からの圧力を受けて、ハンターのラップトップはロシアの情報工作だとする書簡を51人の元情報機関高官の署名を集めて作成したことを認めた。モレルの証言は、民主党によって捏造された情報工作であり、情報工作にCIAやFBIが関与していることを明かにした。ハンターのラップトップには、ハンターがブリスマの幹部からジョーバイデンとの面会を仲介したこと、中国企業との取引に関するメールが含まれていたことを示唆している。パソコンのデータの信憑性については、複数のメディアの専門家によって検証されている。例えば、CBSニュースは、コンピュータ犯罪の専門家の分析で「偽造または改ざんされた兆候はない」と報じられている。また、NYタイムズやワシントンポスト紙もラップトップがハンターのものであることを確認した。さらに、ハンターのビジネスパートナーであったボブリンスキー氏もラップトップに含まれていたメールが本物であることを証言した。もし、ラップトップのデータが本物であるとすると、まだ立証されてはいないが、バイデン副大統領がウクライナや中国などの国に対して影響力を行使した可能性もある。現在ハンターは、連邦政府の調査を受けているが、ジョーバイデンに対する捜査は行われていない。下院監視・説明責任委員会のコマー委員長は報告書の中で、ハンターが海外の怪しげな企業と取引をして、複雑なペーパーカンパニー網を通してバイデンファミリーに何百万ドルもの利益が還流している証拠を公開した。コマーの報告書は、バイデンが副大統領時代に息子たちのビジネスに影響力を行使した疑いがあると主張している。バイデンファミリーの不正取引は国家安全保障に悪影響を及ぼす恐れがあると警告した。ウクライナ疑惑は、トランプがウクライナのゼレンスキーに対して、バイデン親子の捜査をするように圧力をかけたということで、民主党が「職権乱用」および「議会妨害」の容疑でトランプを弾劾訴追した事件である。捜査の過程で、ハンターが父親のバイデン副大統領の影響力を行使して、ウクライナを含む海外と取引を行い、利益をバイデンファミリーに還流させていたという疑いが浮上し、今も捜査が続いている。また、FBIやCIAなどの犯罪捜査機関に対して、党派に中立で公正な捜査が期待されるところ、バイデンおよびトランプの捜査にあたって2重基準が顕著である。2020年の大統領選の直前のNYポストによるハンターのラップトップPCのスクープに対して、FBIはロシアの情報工作であるという偽情報の流布に加担して、大統領選挙を妨害すると共に、ハンターの犯罪を隠蔽した。また、ラップトップPCを保管して調査しながら、調査結果を隠蔽した。FBIは国民の安全を守るための犯罪捜査機関であるが、民主党の敵対者を監視する政治捜査機関になっている。FBIはいつのまにか、犯罪捜査機関から傍聴工作機関の色合いを強めている。Twitterファイルは、FBIがTwitterやSNSに働きかけ、ハンターのラップップに関する投稿を検閲し削除させて、言論の自由を封殺していることを明かした。
【1月6日の議会襲撃事件】
議会襲撃事件は、2020年の大統領選挙で、2021年1月6日にトランプの支持者が「選挙は盗まれた」と抗議して議会に集まり、群衆の一部が議会に侵入して暴動を起こしたという事件である。1月6日は、選挙人投票を集計してペンス副大統領が集計結果を認定することで、新大統領の決就任を決定する日であった。トランプはペンスが集計結果の認定を覆すことを期待したが、ペンスは集計結果を認定した。1月6日、「選挙は盗まれた」と抗議集会に集まったトランプの支持者は数万人に膨れ上ったが、デモの参加者の一部は、暴徒と化して議会に侵入した。民主党は、「トランプが暴動を扇動し、選挙結果を覆そうとした」として、トランプを弾劾訴追した。弾劾決議で出席議員の3分の2以上の賛同が得られなかったためにトランプは無罪になった。民主党下院のペロシは、「トランプを2度と公職につけてはならない」として、21年6月に議会襲撃事件を調査するための特別委員会を下院に設立し、公聴会を開いて証人を喚問して証言を集めた。全部で8回の公聴会を開いて、事件の全容解明を目指すが、22年12月に最終報告書を公表して、23年1月に特別委員会を解散した。最終報告書は、トランプを①議会手続きの妨害、②米国への不正の共謀、③虚偽の供述、④暴動への扇動、の容疑でトランプを刑事訴追するよう司法省に勧告した。下院の特別委員会の勧告に法的効力はないが政治的意味合いは大きい。司法省およびFBIは、下院の特別委員会の調査と並行して議会襲撃事件の捜査を行ってきた。議会襲撃事件に関して、これまでに1033人が逮捕され、570人が有罪を認めている。280人が服役して、18人は懲役5年以上の刑で服役している。下院の特別会は「1月6日の事件でトランプ前大統領が暴動を扇動したとして、事件の責任はトランプにある」と断定したが、トランプの関与について全容が解明されたわけではない。疑惑の捜査は司法省にゆだねられることになる。司法省はジャック・スミス氏を特別検察官に任命した。民主党にとって、トランプの次期大統領を何としてでも阻止しなければならない。そのためには、議事堂襲撃事件でトランプを起訴にもっていくことができれば、民主党にとって大きな得点になる。司法を武器に、トランプに対する闘いが繰り広げられることになりそうだ。ピュー・リーサーチが調査した国民の意識調査によると、事件を扇動したトランプの責任が大きいとする割合は、事件直後の調査では52%であったが、事件から1年後の2022年1月の調査では42%に低下した。民主党支持者では前回の81%から70%に低下し、共和党支持者では18%から10%に低下している。議事堂襲撃事件に関連して、FBIの捜査に対して提起された問題を以下にあげる。
【州兵派遣の依頼】
事件当日のタイムラインは次のようである。11:00エリプス広場で“Save America Rally”開始。11:57 トランプ大統領は登壇して演説を開始。「国会議事堂まで歩いて行き抗議しよう」とトランプ支持者に呼びかけて、1:13にトランプは演説を終了する。この間、12:53ペンス副大統領は「自分には選挙結果を覆す意思はない」として、トランプからの圧力を拒否。13:00ペンスと上院議員は下院議場に向かい、集計結果を認定するための合同会議を始める。結局ペンスはバイデンの選挙勝利を認定する。12:49共和党全国委員会で爆発物らしき物を発見したとの報告があり、議事堂警察が対応、その後民主党全国委員会でもパイプ爆弾が発見される。一方、12:53国会議事堂の外に群衆が増え、警察との衝突が始まる。群衆はバリケードの第一列を突破し、バリケードの第二列に向かって階段を上り始め、警官が後退する中、議事堂に侵入する。12:57最初のグループが議事堂西側に集まり、警官らと衝突し始める。14:10頃、さらに数百人が議事堂の壁をよじ登り、バルコニーに雪崩れ込み始めた。13:49議事堂警察スティーブ・サンドが州兵派遣を要請14:13シークレットサービスがペンスとペロシを上院議場から護衛。15:19ペロシが州兵派遣を要請。17:20州兵が到着し始める。このタイムラインで、州兵の到着が遅かったことに関して、議事堂警察のサンドは州兵の派遣を要請してから州兵が到着するまで3時間以上経っていた。サンドはその前にも州兵派遣の要請を6回もおこなっていたが無視されたという。また、トランプも抗議活動が混乱することを警戒して、1月6日の数日前に州兵派遣を国防省に要請したというが、ペロシは要請を拒否したという。下院共和党は1月6日の安全保障上の決定についてペロシに書簡を出して、回答を求めたが無視されている。(House.Gov. : House Republicans demand Answers from Speaker Pelosi……)
【議会襲撃事件は組織的に計画されたのか】
トランプが、エリプス広場で開かれた集会で、登壇して演説していたのは、10:57~13:13である。エリプス広場から議事堂まで2Kmくらいだといわれているが、数万人という参加者が演説終了後に会場から議事堂まで歩くとすると、議事堂に到着するのは14:00過ぎになるだろう。一方、議事堂に群衆が集まり始め、警察との最初の衝突が始まるのが12:53くらいだという。プラウドボーイズやオースキーパーなどのグループは、予め暴動を計画していたとの見方もある。議事堂警察は、RNC(民主党全国党委員会)とDNC(共和党全国委員会)にパイプ爆弾がしかけられているのを発見するが、その後の調査で爆弾は前日の1月5日に仕掛けられたことがわかっている。このことは、暴動が予め計画されたものであることを示唆する。議事堂警察のサンド氏は「これはデモではない。これは計画的かつ組織的な連邦議会議事堂への攻撃だった」と述べた。事件の翌日、ペロシはサンド氏に辞任を要求し、サンド氏は辞表を提出した、
【パイプ爆弾】
事件当日、議事堂近くのRNCおよびDNCに爆弾が仕掛けられていることを警察が発見し、騒乱に拍車をかけた。FBIは犯人が1月5日の夜に爆弾を仕掛けたことを明らかにして、犯人特定につながる情報の提供を要請している。9月にFBIは、爆弾を仕掛けた爆弾魔の映像を公開して、犯人特定につながる情報の提供を要請した。その後、FBIからの爆弾魔に関する捜査状況は1年半以上にわたって途絶える。2023年5月、元FBI捜査官のカイルセラフィンは内部告発で、「実は仕掛けられたパイプ爆弾は動作不能の爆弾である」ことを明かした。そして爆弾を設置した男の足取りから元空軍曹長が事件に関係していることを突き止めたが、それ以上の捜査はFBIの上司から差し止められたということを明かした。セラフィンの情報は、FBIの「装置はいつでも爆発する恐れがある」という公開情報と矛盾している。内部告発を受けて、米国下院の司法委員会は、パイプ爆弾捜査について、FBIに説明を要求した。FBIの誤情報の発信は、事件全体の構成にもかかわってくる。
【暴徒に潜入したFBI協力者ら】
暴徒のグループにFBIの協力者が潜入していることが、明らかになっている。FBIは1月6日以前から、群衆に潜入し協力者として働く男女を募集していた。実際、情報提供者あるいは工作員など、FBIの協力者が暴徒と仲良く映っている映像も報告されている。下院議長ケビン・マッカーシーは議事堂襲撃事件の様子を映した映像を、タッカー・カールソンにわたし、映像の一部が放映された。カールソンによると、暴徒を議事堂のバリケードに招き入れている映像や、議事堂に侵入した暴徒の自撮りに警察官が一緒に写っている映像もある。また、フェイスペイントをして角のついた毛皮の帽子をかぶり議会に乱入した、Qアノンのシャーマンことジェイコブ・チャンズリーは暴徒の主犯格と目されていたが、警官に護衛されて、上院に入る様子が映されていた。カールソンは「映像では、チャンズリーは警官に案内されて議事堂内を歩きまわっているように見える」、「警察はチャンズリーのツアーガイドの役割を果たした」と言っている。チャンズリーは「公式手続きを妨害した」罪で41か月の量刑を言い渡されたが、2023年5月に収容施から釈放されている。バリケードを突破して議事堂への突入を促すレイ・エップスの姿が映像に撮られ、FBIの指名手配リストに載っていたが、起訴されることなくリストから外されていた。彼は前夜の、トランプ支持者の集会で過激行動を扇動し、周囲からFBIの仲間と噂された。議会襲撃事件の計画と実行にあたって、FBI工作員や情報提供者の関与はなかったとされているが嘘である。
【トランプの起訴】
トランプは2024年の大統領選に立候補することを表明している。2024年の大統領選を巡って、トランプの大統領就任を阻止しようという、民主党の司法を武器にしたトランプとの闘いが激しさを増している。最近、トランプに対する新な疑惑が浮上し、2件の疑惑で起訴された。トランプは、現職または元大統領として刑事告訴された初めての大統領となる。マンハッタン地方検事アルビン・ブラッグは23年3月トランプを刑事訴追した。この事件は「2006年にトランプがポルノ女優ストーミー・ダニエルズと関係をもった」まで遡るが、トランプ側が2016年の大統領選直前にダニエルズに対して口止め料を支払い、この支払が業務改竄して記録されたことが問題になり、大統領選挙運動法にあたるということで、単純な軽犯罪が刑事事件に格上げされた。そして、2023年になってトランプの訴追にまでいたったのである。数か月のうちに、裁判の日程が決定されるが、1年以上先延ばしされる可能性もあるという。6月13日、特別検察官ジャック・スミスはトランプが大統領職を退官してから、機密書類をマール・ア・ラーゴに保管して、機密情報を漏洩したという件でトランプを刑事訴追した。この中には国防に係る情報も含まれ、スパイ防止法違反など31件の罪に問われ、司法妨害や虚偽陳述などの罪も含めて37件の罪で起訴された。トランプは連邦裁判所に出廷し、起訴された37件の罪に対して無罪を主張した。トランプは出廷した後の集会で、今回の起訴について「選挙妨害であり、政治的迫害だ」とバイデン政権を批判した。トランプ側は公判を遅らせる可能性が高く、2024年の選挙前に公判が行われる可能性は低いと予想されている。公判を担当することになったのがアイリーン・キャノン判事で、大統領時代のトランプが指名した判事で、彼女の対応が注目されている。この事件で際立っているのは、バイデン政権の司法省およびFBIの2重基準である。政治的な闘いの場で、司法を武器として、政治的敵対者には厳しく、身内の民主党には穏便にと使い分けている。
【バイデンファミリーの汚職文書】
メディアではほとんど報道されていないが、トランプの訴追を決めた同じ日に、FBIから米下院監視・説明責任委員会に対してバイデンファミリーの汚職に関する文書が開示されていたのである。米下院監視・説明責任委員会はFBIに対してバイデン文書の開示を要求してきた。監視・説明責任委員会のコマー委員長は、FBIのクリス・レイ長官に対して、提出を拒否するならば、議会侮辱罪で告発するとほのめかして、提出させたのがバイデン文書である。この文書は、バイデンが副大統領時代に、ウクライナのブリスマ社に対する汚職捜査をもみ消すために、バイデン副大統領の影響力に期待して、ブリスマ社とバイデンの間でおこなわれた取引に関する。「ウクライナの検察総長ショーキンを解任させるのと引き換えにバイデン副大統領とハンターバイデンに500万ドルずつ支払う」という内容で、ブリスマ幹部による告白(FD-1023フォーム)に基づいて作成された文書である。さらに、バイデン親子と疑惑の取引を行った音声記録テープが17本あることがチャック・グラスリー議員によって明かされた。15本がハンターバイデンとの音声記録であり、2本がバイデン副大統領との音声記録であるという。これまで、ウクライナの疑惑を巡って、ハンターバイデン親子の関わりが疑われてきたが、この文書はバイデン副大統領およびハンターの収賄疑惑をいっそう確かにした。FBIはこれらの証拠を保管しながら、バイデン親子は起訴されることはないだろう。検察がバイデンを起訴しない限り、彼らは罪に問われることはないのだ。トランプは「バイデン政権の司法省およびFBIは司法を武器に、政敵を陥れ、身内をかばっている」「根拠なく私を起訴した。わが国史上最悪級の権力の乱用をした」とバイデン政権を非難している。バイデン文書の開示と同じ日に、トランプ訴追の決定がなされた。メディア各社は、トランプの訴追を大々的に報道したが、バイデン文書の開示についての報道はほとんどなされなかった。バイデンの汚職疑惑を示すバイデン文書の存在は、トランプ訴追の報道の前にかき消されたのである。
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