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2023-08-05 00:00
BRICS首脳会議からのプーチン露大統領締め出しと、アフリカの民主主義の行方
河村 洋
外交評論家
元稿の時点では、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が本年8月のBRICSヨハネスブルグ首脳会談に出席するかどうか関係国の間で検討されている段階であった。しかし国際刑事裁判所(ICC)に指名手配されたプーチン氏を、ローマ規程の締約国である南アフリカが受け容れることはできなかった。これによってウクライナ侵略をめぐって自国への支持を勝ち取ろうとするロシアの外交攻勢は、大いに制約を受けることになった。
今年の9月にはニューデリーでG20首脳会議が開催されるが、インドはローマ規程の締約国ではなくともプーチン氏の招請には慎重にならざるを得ない。5月のG7広島サミットにおいて、ナレンドラ・モディ首相はウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領と会談して人道支援の約束をした。すでに本年7月にインドが主催した上海条約機構の首脳会議はオンラインで行われ、プーチン大統領の訪印はなかった。中国も同様に今秋に期日未定ながら開催予定の一帯一路国際協力サミットフォーラムにおいて、プーチン大統領を招くか否かの決断を迫られよう。こちらもローマ規程の締約国ではないが、さて国際世論の反発をものともせずに国際刑事裁判所の指名手配を受けた人物を受け容れられるだろうか?
国際的な動向とともに、今件が南アフリカおよびアフリカ全体の民主主義に及ぼす影響も見逃せない。司法手段を通じてプーチン大統領の訪問阻止に及んだ南ア最大野党の民主連盟(DA)は、今回の決定をANCとロシアに対する法の支配の勝利だと訴えている。すなわち行政権力の暴走が司法権力によって抑えられたわけである。これは左翼のラマポーザANC政権とは真逆の立場にあるイスラエルのネタニヤフ・リクード政権が、最高裁判所の権限を縮小した司法改革によって国際的に非難されていることからもわかるように、時の政権への歯止めは民主主義に不可欠である。アフリカ・ナショナリズムを掲げるANC政権にとって、現行のICC体制は欧米偏重との不満があるようで、ローマ規程から離脱してプーチン大統領をBRICS首脳会議に迎える考えもあったようだ。しかし当地のシンクタンクISS(戦略問題研究所)のピーター・ファブリシウス氏が指摘するように、アフリカ地域での刑事裁判所が設立される見通しがない以上は南アフリカのICC脱退は非現実的である。
確かにANCにはアパルトヘイトを終焉させた「マンデラの党」としての実績はあるが、その後のネーション・ビルディングでは汚職が絶えず、安定した統治能力には疑問がある。ジェイコブ・ズマ前大統領に至っては自らの不動産関連の汚職など16件で起訴されながら、病気療養を理由に海外への逃亡を図ろうとして逮捕されている。この党の看板政策であるブラック・エンパワーメントにも、政権に近い者が有利なネポティズム、クローニーキャピタリズムとの批判が絶えない。アメリカにおけるアファーマティブアクション見直しもあり、人種平等のあり方は再考されるべき課題だろう。そうした中で、DAはアフリカにおける透明性ある西欧型民主主義の旗手として貴重な存在である。そして、この党には有権者より「白人の党」と見られる現状の突破が期待される。最後に最近、ニジェールで起こったクーデターについて述べたい。プリゴジンの乱は収束したものの、サヘル地域でのワグネルの影響力は依然として強い。この件に関しては欧米とロシアの対立もさることながら、ECOWASやAUなどアフリカ人自身の手による民主主義のレジリエンスも要注目である。
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