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2023-08-22 00:00
新しい冷戦の勝者はアメリカではないだろう
古村 治彦
愛知大学国際問題研究所客員研究員
第二次世界大戦後からソヴィエト連邦崩壊までの約半世紀、世界は「冷戦構造(Cold War)」にあった。アメリカとソヴィエト連邦がそれぞれの影響圏を確立し、その影響圏がぶつかるとことで、局地的な戦争が行われたが、米ソ両国間での直接の戦争は起きなかった。冷戦については「長い平和(Long Peace)」という評価をする学者もいるが、戦争が起きた地域においてはそのような言葉は空虚に聞こえることだろう。マクロでみるか、ミクロで見るかの差ではあるが、世界は世界大戦が起きなかったということにはなるだろう。
ソ連崩壊後、アメリカ陣営は「勝った、勝った」の大合唱、民主政治体制、資本主義、法の支配が勝利したと喧伝された。アメリカはこれらの価値観の伝道者、庇護者を自認し、他の国々にこれらを広げて、世界全体を1つの価値観に染め上げよう、そうすれば戦争などなくなり、平和な世界が到来するという「理想主義」が主流になった。アメリカが盟主の世界を改めてきっちりと構築しようということになった。この世界には多様性は存在しない。自分たちの価値観の正しさを押し付ける、押し付けられる、発展具合を勝手に判断されて進んでいる、遅れているということが判定される世界である。
ポスト冷戦時代において、アメリカを中心とする西側諸国(the West)と、それに対抗するBRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)を中心とする「それ以外の国々(the Rest)」という2つのグループ分け、勢力圏という構図になっている。ポスト冷戦期、アメリカが世界唯一の超大国となる一極構造(unipolar system)が崩れつつある。冷戦期のような二極構造(bipolar system)となるか、多極構造(multipolar system)となるか、という話であるが、やはり、米中二極構造の冷戦期と同じような構造になるだろう。アメリカをはじめとする西側諸国は衰退を続け、それ以外の国々がこれから伸びていくことで、これら2つの勢力圏は均衡状態に入り、やがて、西側陣営が逆転される。前回の冷戦では勝者となった西側が、今回の冷戦では敗者になるという可能性が高まっている。
アメリカの最大の失敗は、ロシアを自陣営への取り込みに失敗したことだ。中国がここまで急速にかつ強力に成長、台頭すると予測できなかったということはあるだろうが、中露の間を緊密にさせないこと、もしくは離間させることが何よりも重要だった。しかし、ソ連崩壊を受けて、「お前らは負け犬だ、俺たちの言うことを全て受け入れろ」「民主政体、資本主義、法の支配、人権など、俺たちの価値観を全て完璧に受け入れて実践しろ、そうしたら幸せになるぞ、日本を見て見ろ」という態度で、ロシアを徹底的に見下して、傲岸不遜の態度を取った。それはまるで敗戦国日本の占領と同様であった。誇りと尊厳を傷つけた。結果として、ロシアは「アメリカの価値観を受け入れても幸せにならず、アメリカにずっと下に見られ続ける」ということに気づいてしまった。結果として、アメリカは中露を中心とする非西側諸国という対抗グループを生み出してしまった。「これでは新しい冷戦が始まってしまう」という懸念の声が出ている。しかし、既に米中対立は始まっている。冷戦構造になりつつある。そして、今回の冷戦の勝者がアメリカになる可能性は低くなっている。私たちは世界史の大きな転換点に直面している。
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