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2007-11-09 00:00
洋上給油も違憲、アフガン地上部隊派遣も違憲
吉田康彦
大阪経済法科大学客員教授
小沢一郎・民主党代表は、国連決議不在を理由にインド洋上における海自の補給活動を違憲として反対し、参議院で過半数割れした与党は「テロ特措法」延長を断念した。たしかに米国主導のOEF(不朽の自由作戦)は、「テロとの戦い」と称してブッシュ政権が個別的自衛権の行使として展開したもので、安保理決議による授権を経ていない。他の諸国も集団的自衛権行使として参加している。したがって海自派遣も憲法が禁ずる集団的自衛権行使と見なされうる。
そこで日本政府は、アフガン現地における地上作戦であるISAF(国際治安支援部隊)派遣延長を認めた安保理決議1776の前文に、洋上給油に「謝意」を表する一文を挿入させ、これをもって国連の“お墨つき”と認めさせようとしたが、そんな姑息な手段は通用しない。前文は決議事項を飾る枕詞にすぎず、これによってOEFの国際法上の性格が変わるわけではない。
いずれにせよ、海自の洋上給油を可能ならしめていた「テロ特措法」は失効し、現在、国会は給油継続のための新法制定を審議しているが、短期間の特措法でなく、わが国の国際貢献を明文化した恒久法制定が望ましいことはいうまでもない。
小沢代表は、国連決議にもとづく自衛隊派遣は、たとえ武力行使しても「国権の発動」ではなく、国連憲章下の集団安全保障であるから違憲ではないと主張、ISAF参加ならば問題はないとしているが、とんでもない誤解である。ISAFはたしかに安保理決議1386で承認されているが、アフガニスタンのカルザイ政権の治安維持を支援するための多国籍軍であり、統一司令部はNATO(北大西洋条約機構)軍が受け持っている。
そもそも多国籍軍は、国連憲章第7章下の武力行使ではなく、PKO(平和維持活動)と同様、憲章に明文規定がない。便宜的に案出され、運用されているもので、国際法上、厳密に集団安全保障行為と言えるかどうかは疑問の存在である。共通の武器使用規定も存在せず、各国部隊の判断に委ねられており、明らかに「国権の発動」である。小沢氏が「違憲に非ず」としているのは、いわゆる純粋な「国連軍」だが、これはまぼろしの存在で、国連発足以来いちども編成されていない。
現実のISAFは多数の死者を出し、撤退する国が相次いでおり、アフガニスタンは事実上無政府状態にある。多国籍軍への自衛隊派遣など無謀極まりない。武力行使しないPKOならば可能だが、そのためには現地で、カルザイ政権、北部勢力、タリバンの間に停戦協定が結ばれていなければならず、いつのことになるかわからない。国際貢献のために原理・原則を貫くことは必要だが、そのためには犠牲も厭わない覚悟が不可欠である。
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