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2023-09-12 00:00
ウクライナとロシアの継戦能力
赤峰 和彦
自営業
ロシアがウクライナ侵攻を始めてすでに1年半が経過しました。NATOの強力な軍事支援があっても、ウクライナの反転攻勢が十分な成果を上げているかは、現状では言い難いものがあります。一方、ロシアでは民間軍事組織ワグネルの長であるプリゴジン氏の反乱が起きるなど混乱を増しています。それでも、プーチン大統領もゼレンスキー大統領も戦争継続の構えを崩しません。国際社会にとっても、戦争が長く続くことによる負担は大きいものがありますが、果たして戦争は収まるのかは全く見えてきません。そこで、国際政治の専門家と、ウクライナの現状、ロシアの現状から、両国の継戦能力について議論しましたので、その内容を紹介します。
9月3日にゼレンスキー大統領がレズニコウ国防大臣を更迭すると発表しました。理由は、国防省内の贈収賄汚職事件です。今は戦争中のため、国防省が大量の食料や物資、兵器を購入しますが、そこで不正がありました。西側から正式なルートで来た兵器を一部横流しして、ヨーロッパのアンダーグラウンドの世界に流しているというのです。腐敗した状態で金儲けに使われているなら経済援助も軍事援助もやる気が失せてしまいます。ウクライナ支援に対する支持率も落ちますからこの状態を正すために決断したということでしょう。実は、これ以上に大統領の足元を揺るがす事件も起きています。ゼレンスキー大統領の一番の支援者であるコロモイスキーさんがマネーロンダリングで起訴されました。2013年から2020年までに違法に獲得した5億フリブナ(約20億円)を自ら支配する銀行から国外送金して資金洗浄した疑いがあるとのことです。ゼレンスキーさんとコロモイスキーさんは大統領になる前に14回も一緒に旅行するという深い仲でした。しかし、ウクライナがマフィア国家のような状態だと世界中からウクライナへの支援が集まりません。一定の規律を示さなければということでお世話になってきた財閥ではあるが起訴せざるを得ないとなりました。このような汚職続きでは総力を結集してロシアと戦っているとは到底言えません。ウクライナの戦争継続能力がだんだんスタミナ切れになってきています。秋から冬にかけて、やむを得ず停戦・休戦を受け入れる状況にがってくると思います。
つぎに「ロシア経済」継戦能力に関して、ロシアの食料、エネルギー事情の実態はどうなっているのでしょうか。まずロシア国家財政におけるエネルギー収入を見てみます。ロシア軍のウクライナ侵攻で世界的に石油価格と天然ガス価格が跳ね上がり、ロシアの収入は一気に増えました。経済制裁などで下がった時期もありますがもう1回持ち直してきています。ロシアの戦争を続けるスタミナは結構あるということです。次に世界の小麦輸出に占めるロシアの比率ですが、23年7月時点で去年最高の35%くらいに到達しています。2023年度のロシア産小麦の輸出量は過去最高になると予測されています。一方でルーブルの対ドルレートは確実に下がってきています。ロシアの中央銀行は金利を一気に3.5%も上げました。この後金利を少しずつ下げていくことでロシア国債の値段が上がっていきます。その儲けを狙ってロシア国債を買ってくれる金融会社があるということです。国債を買ってくれたらルーブルの需要が高まるという為替操作のやり方をしています。そのおかげで、戦争で下がりっぱなしかというとそうでもないのです。石油や天然ガス輸出もある程度順調、国内に食料はたっぷりあるし、外貨もしっかり稼いでいます。
このように、ロシアの戦争継続能力は結構しぶといものがあるのに対し、ウクライナの方はなかなか厳しい状態に追い込まれているのが現状です。
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