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2007-11-12 00:00
日米首脳会談で福田首相は日本外交のビジョンを提示せよ
角田勝彦
団体役員・元大使
11月16日に控えた日米首脳会談で、福田首相は対テロ新法案の衆院通過程度を手土産に、在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)や米国産牛肉の輸入規制撤廃問題で日本の立場を訴え、米国が検討中の北朝鮮のテロ支援国家指定解除問題では拉致問題解決を解除の前提条件とするよう改めて働きかけることになろう。米側の不満解消が主目的になる。しかし、この際併せて、より基本的な我が国の立場・ビジョンを説明すべきと考える。とくに核軍縮決議案と気候変動に関する提案は重要である。紙数の関係もあり、ここでは前者を中心に述べる。これは「積極的平和主義」の一環としても推進すべきものである。
10月末、第62回国連総会第一委員会において、我が国が提出した核軍縮決議案「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」が圧倒的賛成多数で採択された。今後、同決議案は国連総会において12月初旬(予定)に再度票決に付されるが、1994年以来採択され続けてきているから採択は間違いない。問題は、従来と同様、インドと北朝鮮とともに米国が反対に回っていることである。米国が主に問題にしているのは、CTBT(包括的核実験禁止条約)の早期発効が求められている点である。米国は1996年、クリントン前政権がCTBTに署名したが、米上院は99年10月、批准案を否決した。ブッシュ現政権は、これまで、他国の条約違反を探知できないなどCTBTには「致命的欠陥がある」とし、上院に再考を求める考えがない立場を明らかにしている。
言うまでもなく、核戦争は「絶対悪」である。しかも我が国にとり身近に存在する危険である。11月9日、ゲーツ米国防長官は、日本での講演で、北朝鮮の核問題について「北東アジアは地球上で核による衝突が起こりうる最後の地域の一つだ」と述べた。核抑止力を「必要悪」と捉える見方はあろうが、日本決議案には、核兵器国のなかでもロシアと英国は賛成し、フランス(昨年賛成)と中国は棄権している。その中でインドと北朝鮮とともに米国が反対に回っているいまの状態は情けないというほかない。次の米政権(現在民主党ヒラリー優勢)がどのような態度をとるかはわからないが、米印原子力協定が棚上げになったこともあり、ブッシュ政権として再考すべき時期であろう。
筆者は、本欄への投稿(10月2日付投稿423号)で、「福田内閣は外交ビジョンを提示せよ」と論じた。安倍前政権の失敗に懲り、実務者的安定性のイメージ樹立を第一として「背水の陣」的守りを重視している福田内閣がビジョンの提示にあまり乗り気でないのは、戦術として良くわかる。事実、小沢民主党代表の辞意表明と撤回という大きな敵失を誘った。その投稿でも述べたが、心配なのは、新内閣がこのまま懸案対応・実務処理型を続けると、世界における日本の地盤沈下がますます進むことである。この危惧は私だけではない。たとえば鍋嶋敬三氏は本欄への「アフリカ外交への取り組み急げ」と題する投稿(10月31日付投稿446号)で、2008年5月東京で開催される第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)を控え、「福田康夫首相の顔が見えない」と慨嘆されている。来年には北海道洞爺湖サミットもある。目前には15日よりの訪米とブッシュ大統領との会談、シンガポールでのASEAN+3(日中韓)と東アジアサミットが迫っている。少なくとも外交については、新・福田ビジョンを提示すべきときが来ているのだろう。
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