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2023-10-09 00:00
【外務省“未確認”情報】土壇場の「林外相」交代劇の謎
鈴木 美勝
日本国際フォーラム上席研究員
9月の内閣改造・自民党人事を巡り、マスメディアが大きく報じたのは、女性閣僚が5人に増えた点と小渕優子の選対委員長への抜てき人事。だが、最大のサプライズは、留任が当然視されていた外相・林芳正の交代劇だった。外務省としては、林留任を前提に国連総会への対応を進めていただけに、想定外の人事。当の林も、自身の交代を知ったのは改造前日だった。首相・岸田文雄と、将来の総理大臣候補とも目されている林との間に何があったのか。さまざまな臆測が流れた。深層は実に生臭い。
◇キーウ訪問直後の暗転
国連総会への出席を控えた9月、外相・林は3日からの中東3カ国歴訪に続いてポーランドに飛び、9日、ウクライナの首都キーウに入った。同国の戦後復興支援をも視野に精力的な外交を展開した林は、11日に帰国すると、翌12日、外国歴訪の成果を報告するため、首相官邸に出向いた。林が外務省欧州局長・中込正志に伴われて首相と会ったのは、午前11時20分すぎから約20分。帰国報告を受けた岸田は人払いした後、林と差しで10分ほど向き合い、外相交代を告げたという。会談後の林は、動揺した様子をいささかも見せることなく、いつものポーカーフェースを貫き通した。外務省に戻ると、午後、国連総会出席に向けた局長ブリーフなどを受けたが、その時も「ブリーフの際の普段の対応と変わらぬ受け答え」(外務省筋)。林外相交代を察知した幹部はいなかった。外務事務次官・岡野正敬が、林の交代とその後任、上川陽子(元法相)内定を首相官邸から知らされたのは夕方近く。「デジタル担当相か官房長官では」と周囲に漏らしていた上川も寝耳に水の外相抜てき人事だった。外務審議官や局長ら幹部が知ったのは、「第2次岸田再改造内閣固まる」として一斉に各メディアが報じ始めたわずか3時間ほど前だった。
◇「常識」を覆した岸田の不快感?
今回の外相交代劇を巡っては、さまざまな臆測が流れている。一つは、反中国派への配慮説。「林は中国寄り過ぎる」─麻生(太郎副総裁)の進言を岸田が聞き入れたからでは、との説だ。二つ目の説が、「総理はもともと、女性起用の目玉にと、外相交代を考えていた」というもの。だが、来年秋の自民党総裁選をにらんで再選を狙う岸田は今回の人事で、茂木敏充(自民党幹事長)、河野太郎(デジタル担当相)、高市早苗(経済安全保障担当相)といったポスト岸田をうかがう面々を留任させて政権内に封じ込めた。併せて、引き続き支持を取り付けるために最大派閥の安倍派「五人衆」(官房長官・松野博一、経済産業相・西村康稔、政調会長・萩生田光一、参院幹事長・世耕弘成、国対委員長・高木毅)全員を留任させた。にもかかわらず、政策の継続性が重視されるべきはずの外交・安全保障担当の2閣僚(外務、防衛両大臣)を交代させたのだ。あろうことか?特に外相はと言えば、日本は年末まで先進7カ国(G7)の議長国であるから「常識的にはこんな形での途中交代は考えられない」(外務省筋)。が、岸田はそれを百も承知の上で林を切った。そこで浮かんでくるのが第3の説だ。林はキーウ訪問に三木谷浩史(楽天会長兼社長)らを同行させた。林の野心が垣間見えたのか、岸田が不快感を持ったという説だ。この説の背景には、既に6回も入閣している林への嫉妬と派内の不満がある。他の議員にチャンスを与えるのを理由に、岸田は外相交代に踏み切ったというわけだ。
◇岸田「首脳外交こそ真の外交」
第2次岸田再改造内閣が発足した9月13日夜の記者会見。「政策の継続性が求められる外交・安全保障分野で留任する大臣、とりわけ林外相を代える必要があったのか」との質問に、岸田は反論した。「外交は、外務大臣あるいは防衛大臣をはじめとする閣僚も役割を果たしますが、それと併せて首脳外交というものが大変大きなウエートを占める。私も長く外務大臣を務める中で、外交の有り様、外交における首脳外交の重要性を痛感いたしました。私自身、この首脳外交において大きな役割をこれからも果たしていきたい」この岸田発言には、4年8カ月にもわたって「安倍首脳外交」の下支えに徹した自らの経験が込められている。要は、林の外交パフォーマンスは矩(のり)を越えたということなのか?第3の「岸田不快感説」は当たらずとも遠からず。この延長線上で考えれば、来年、総裁任期切れが近づく中で、なおも岸田内閣支持率の低迷状態が続いているならば、宏池会・岸田派内に「代替わり」を迫る声が浮上する可能性もある。「新しい選挙の顔を」─そんな想定を意識してなのか、林を表舞台から追いやって、その芽を早めに摘んでおこうと、岸田が考えたとしても不思議ではない。現に、林は自民党の役職は平の総務に割り振られただけ。岸田が「林を戻したのは宏池会運営の強化策」と周辺に釈明したところで、派閥の役職も岸田後継を意味する「会長代行」ではなく、「座長」に据え置かれたままだ。とかく「上から目線」とやゆされる林に対する岸田の気持ちが、この辺りに反映している。(敬称略)(時事通信/2023/10/2配信より)
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