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2007-11-13 00:00
年末解散で民主党は政権に届かない
杉浦正章
政治評論家
新テロ法案が衆院を通過し、いよいよ民主党の牙城参院での審議に移行する。民主党は法案阻止の構えを崩しておらず、このまま激突すれば、衆院解散の事態も予想される。しかし、選挙情勢、世論の動向を冷静に見る限り年末解散で民主党が衆院で過半数を制し、政権を獲得するに至る要素は乏しい。民主党は、話し合いによる妥協を迫まられる形となっている。鳩山由紀夫民主党幹事長は、新テロ法案について世論の動向を重視する方針を繰り返し強調しているが、その世論の動向で注目すべき結果が出ている。それはあれほど防衛疑惑が騒がれたにもかかわらず、国民は新テロ法案と防衛疑惑を分けて判断していることが分かった点だ。筆者は防衛疑惑でおそらく給油支持が減るかも知れないと思っていたが、増加しているのである。読売新聞と産経新聞は今日の紙面でいずれも支持が51%に達したと報じている。日経も44%が賛成である。当初は不支持が上回ったものが、ここ数回逆転傾向を維持し、増加している。一番のポイントは朝日新聞の調査だ。活動の再開が「必要だ」が43%、「必要ではない」が41%とはじめて逆転しているのである。
こうした風潮をうけてか、朝日の13日の社説はどことなく元気がない。「接点を探れぬものか」と見出しをとり、「給油は一つの選択肢かもしれない」とも述べている。各紙とも連立問題に対する小沢一郎代表の一連の動きには一致して厳しい結果が現れている。まさに民主党に逆風が吹いている情勢である。さらに選挙情勢を見渡せば、読売新聞の渡辺恒雄氏と小沢氏が一致しているように、年末解散・総選挙で民主党が政権を取れるような情勢にはない。小沢氏が、「参院選挙の結果がそのまま衆院に反映することはない」と述べ、渡辺氏が「自民党は減っても40議席か50議席くらい」と述べているような傾向だ。筆者が分析した結果でも自民党の減少は30議席から55議席の幅である。小泉チルドレンなどバブル的当選者に厳しい情勢が展開している。従って、自民党・無所属会306議席、公明党31議席の与党は多数を占め続ける流れとみられる。防衛疑惑が大疑獄事件へと発展すれば別だが、ねじれは継続するわけである。
そうした見通しの中で民主党の選択肢は何か。首相問責決議の可決が可能であると言うことは、いまや解散の大権は首相と同時に民主党も握っているような政治の構図だ。新テロ法案の衆院可決→参院否決→衆院再可決→衆院解散に突き進むのかどうかだ。伊吹文明幹事長によれば、民主党がいたずらに法案審議を引き延ばした場合でも、首相は重要決断をするかもしれないと述べている。民主党の選択は、法案をめぐって話し合いで接点を見いだしてゆくか、衆院の再可決を黙認するか、問責決議を可決するかのいずれかであろう。しかし、国民生活に影響する予算編成を年末に控え、国民の支持が半数に達している給油問題を無視して、激突のコースをたどるべきだろうか。ここは選挙戦略から言っても、激突戦略には無理がある。おまけに民主党が握った「解散の大権」を国論の多数が支持している「給油」の問題で使うのは、愚策中の愚策であろう。ここは大局をにらんだ一歩引く姿勢が望まれる。
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