ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
本文を修正後、投稿パスワードを入力し、「確認画面を表示する」ボタンをクリックして下さい。
2023-11-02 00:00
中国の前国務院総理李克強の死とそれのもたらすもの
宇田川 敬介
作家・ジャーナリスト
中国の李克強国務院前首相が亡くなった。68歳であった。李克強の死因は上海のホテルのプールで遊泳中に心臓発作が起きたというように報道されている。しかし、その辺の情報に関してはどうであろうか。李克強は、在職期間の間からガンを患っているという情報があった。本年の春に全人代において特に何も言わずに、李克強は特に抵抗することもなく首相の座から降りたのは、そのガンの話からではないかというように言われていたのである。胡錦涛が表に出てきて様々なことが言われたが、基本的に、それらはすべて「習近平派」と「共産党青年団派」というように分かれていた。それまでは「太子党」というような派閥の事がいわれていたが、江沢民などの引退や孫政才などの失脚で太子党はあまり聞かなくなってしまった。李克強は、優秀な経済官僚であり、なおかつ有能な首相であったが、しかし、そもそも習近平が国家主席になる時に、李克強と習近平の間で権力争いが起きた。当時、李克強をよく知る人は「共産党のことを考えれば、実務ができる人が国務院で動かさないと、国全体がおかしくなってしまうと李克強が言っていたよ」と言っていた。その結果がこの10年間の中国である。今までの江沢民や胡錦涛の時代とは全く異なる習近平の独裁的なやり方と、反腐敗という名目をつけた粛清は、様々な問題を生んだ。その問題の中にあり、そして国際的な軋轢を生みながらも、李首相は何とか共産党の政治をなるべく国際的にそして改革開放経済としての内容で、時代を逆行しないようにしていた。
鄧小平の改革開放政策は、教育に関しても「改革開放」を行った。それは、大学に入るのにそれまでは「共産党宣言」などを暗唱する「共産主義の科挙」が受験の項目であったのに対して、李克強の世代からは英語や日本語を大学で習い資本主義や至上主義経済も大学で学ぶことができたのである。李克強の世代から教育の改革開放ということは、その年上になる習近平は改革開放教育を受けていないということになる。要するに習近平は「共産党至上主義」で「共産主義宣言」や「毛沢東語録」を記憶することが大学に入ることの条件であった。そのような人物が残り、毛沢東的な政治を行い、そして改革開放を志したナンバー2の李克強が死んでしまったということになる。この教育の改革開放に言及する李克強評を日本で目にすることはほとんどない。教育の改革開放で、経済を学んだ李克強の行った経済政策に関しては「リコノミクス」という様々な意味で市場経済の構造改革を行い、なおかつ市場的な価値が上がった。しかし、習近平による企業の締め付けと、反腐敗による恣意的な政治、そして先の見えない政策を考えれば、やはりなかなかうまくゆくような状況ではなくなってきていた。李克強の経済のままであれば中国は発展していたが、習近平が力をつけ、独裁的な判断を行い、そして李克強がガンにかかって徐々に行動を自粛せざるを得なくなってきたのちには、中国の経済は陰りができてきている。まさに、現在の中国の経済の悪化は、そのまま李克強の死と関連付けられることになるのではないかと思う。
それだけではなく「教育の改革開放」ということは、「国際協調」ということができていた。もちろんアメリカや日本の国際協調に比べれば、全く異なる内容であったと思うが、しかし、少なくとも社会主義の政治である中国の中においては、かなり先進的な改革開放的な外交政策を行っていたのではないか。しかし、中国の為政者は伝統的に「自分より仕事のできる部下」を嫌う。その意味では、李克強も例外ではなかったと考える。その内容こそが、まさに今回の内容になったのではないか。そのような意味で、私は今回の死が「暗殺」ではないことはよく理解する。習近平もそこまでのバカではない。つまり、「待てば死ぬ」李克強を待てないはずがないのである。そのように考えれば、わざわざ暗殺する必要性などはない。暗殺をするのもコストがかかるのであるから、そのような無駄な子をとするのであれば、他の人を暗殺するであろう。しかし、「暗殺をしていないのに、暗殺をしたと思われてしまう」ということが、習近平の不断の行いが見えてきてしまうということになる。まさに、その対立やその内容を知っている人などは、暗殺したに違いないといってしまうことになる。
同時に「暗殺されたのではないか」というような疑念は、様々な「疑心暗鬼」を生む。例えば、葬儀などが公に行われないという事がある。俗にいう六四天安門事件における学生の集会も改革派の胡耀邦の死と名誉回復を求めるデモが初めである。当然に習近平政権は、死んだ李克強をおそれなければならない。まさに「死せる孔明生ける仲達を走らす」という状態になるのではないか。今後、習近平を止める勢力がなくなった。逆に言えば「習近平が生きている間は、今の中国の拡大政略はなくならない」ということになる。同時に中国の経済は悪化するであろう。そのために何が起きるのか。日本人はそれに備えなければならない。
投稿パスワード
本人確認のため投稿時のパスワードを入力して下さい。
パスワードをお忘れの方は
こちら
からお問い合わせください
確認画面を表示する
記事一覧へ戻る
公益財団法人
日本国際フォーラム