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2007-11-14 00:00
転換期迎えるアメリカ外交
鍋嶋敬三
評論家
米国の「力による外交」は反省の時を迎えたようである。超党派の米有識者グループが発表した米国の安全保障・外交政策の報告書は、軍事力偏重のブッシュ外交への批判でもあり、単独行動主義から多国間協調体制への転換を軸にした、新たな外交戦略を提言した。ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)の「スマートパワー委員会」の報告書は、共和党のアーミテージ元国務副長官、民主党のナイ元国防次官補が共同座長になってまとめた。大統領選挙1年前のタイミングを狙って公表された提言は、次期大統領がどちらの党になっても採用し得る外交戦略の青写真であり、グループの政治的影響力からしても、米外交の転換に弾みをつけることになるだろう。日米同盟関係を外交の基軸としてきた日本政府は、米国の変化を俊敏にかぎ取る必要に迫られている。
報告書は第2次大戦後の米外交を振り返り、軍事力を中心とするハードパワーで冷戦期のソ連を抑止する一方、経済援助などのソフトパワーで日本や欧州の復興を果たし、また国連や世界銀行などの国際システムの中核となる機構を確立した、と二つのパワーの有効性を認めた。その上で2001年の9・11テロ以降、米国がテロとの戦争を世界への関与の中枢部分にしたことが問題の核心だと批判した。米外交の目標は、米国の優越性を持続させることだとして、ソフトパワーの強化を強く進言している。
「強制力を伴わずに他国の人々を米国に引きつける能力」と定義するソフトパワーは、政治的価値、経済や教育のシステムなど、米国には潤沢だ。米国の戦略目標を達成するために、ハードとソフトの双方をうまく組み合わせた「スマート(賢い)パワー」が必要だという。軍事力だけでなく、同盟や地球規模の課題に対処するための国際機構への影響力を拡大し、米国の行動に対する正統性を確立するため、集中的に力を注入すべきだと力説した。CSISのハムレ会長は「世界問題の重心がアジアにシフトしている」と指摘した。日米同盟関係について報告書は「過去7年間で強化された多層的な協力関係を継続している」と一定の評価をした。
一方、中国に対しては「世界の安全保障と繁栄にとって米中関係ほど重要な二国間関係はない」と高く評価した。かつてマンスフィールド駐日米大使が「日米関係ほど重要な二国間関係はない」と発言をしたが、今や「日本」は「中国」に取って代わられたようである。中国への評価の背景として、報告書は「中国は世界的大国になるため長期的戦略目標を追求している」「ハードパワー強化の一方、ソフトパワーによる影響力拡大を目指している」と指摘した。その例として東南アジア諸国連合(ASEAN)、上海協力機構、北朝鮮の核をめぐる6カ国協議、国連平和維持活動などでの役割増大を挙げた。「真の責任ある利害関係者(stakeholder)になろうとする努力の証し」と述べ、西側諸国として中国を積極的に評価したのが目立つ。アジアが米中ソフトパワー競争の主戦場になると見ているのだ。
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