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2024-01-10 00:00
北朝鮮による砲撃とお見舞い
荒木 和博
拓殖大学海外事情研究所教授
北朝鮮が1月5日に黄海側のNLL(北方限界線・事実上の南北の海上における国境線)付近に約200発の実弾射撃訓練を行いました。韓国と北朝鮮は6年前の軍事合意でNLL付近に定めた海域に砲撃しないことを取り決めていましたが、今回はこれを無視したもの。韓国軍は倍の約400発の射撃訓練で対応したそうです。その一方で北朝鮮の朝鮮中央通信は6日、金正恩が能登半島地震について5日に岸田文雄首相に見舞いの電報を送ったと報じたとのこと。「被害地域の人々が一日も早く地震の被害から復旧し、安定した生活を取り戻せるよう祈る」と伝えたとのこと。そもそもそんな心配してるなら拉致被害者返せよとツッコミを入れたくなる話です。
今回と同じ延坪島海域への砲撃は13年前の平成22年(2010)11月に島に向けて今回とほぼ同じ程度の砲弾及び多連装ロケットを打ち込み、市街地を破壊、韓国軍海兵隊員2名と民間の作業員2名が亡くなりました。砲撃をした陣地を後に金正恩は視察しています。2017(平成29)年5月5日付朝鮮労働党機関紙「労働新聞」には「敬愛する最高領導者金正恩同志におかれては西南前線水域最南端に位置するチャンジェ島防御隊と茂島英雄防御隊を視察された」という記事が掲載され、こう書かれています。
偉大な領導者金正恩同志におかれては)延坪島砲撃戦は(朝鮮戦争の)停戦以後の最も痛快な戦いだった。茂(ム)島英雄防御隊軍人たちの遺訓はわが党歴史とともに永く伝えられる輝かしい軍功であるとおっしゃり、新たに入隊した軍人は誇らしい遺訓のバトンをしっかり引き継いで今後の戦いでも英雄防御隊の本領を再び見せなければならないとお話しになった。
韓国側が何もしていないのに奇襲で砲弾を撃ち込んだのが「停戦以後の最も痛快な戦いだった」というのが北朝鮮です。しかし今回の「お見舞い」も含め、最近 やっていることがバラバラなのは北朝鮮の中で指揮命令系統が混乱しているのか、金正恩の頭の中が混乱しているのか、どちらかでしょう。いずれにしても「金正恩の被害地域である北朝鮮の人々が一日も早く金正恩の被害から復旧し、安定した生活を取り戻せるよう」の方が適当ではないかと思います。こちらは変に一喜一憂せず冷静に状況を見守る目が必要です。
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